◆来ない花屋を待ちながら

 花などとは、とんと縁のない日々を送ってきた。文字通り、華のない人生である。

 花を買って帰るとか、花瓶に花を挿すとか、そんなことをすることはほぼまったくない。

 思い起こすと、母親が一時生け花をやっていて、茎を切ったり剣山に刺したりしていたことはある。たぶん、私が小学生のころだ。
 あれはなんだったのだろう?
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 低調な日々に少し華を添えて気分を変えるのもいいかと思い、花を飾ってみることにした。
 ちょうど、花を月2回配達してくれるというチラシが入っていたのが気になっていたので、しばらく後にWeb経由で申し込んでみたのだ。チラシが即ゴミにならなかった稀有な例である。

 息子が将来、家庭に花のあった一時期を「あれはなんだったんだろう?」と思い出すのも悪くないという気も少ししている。

 ところが、申し込みから10日ほど放置された。
 「1週間経っても連絡がない場合は申し出てくれ」と受付メールに書いてあったので連絡すると、そこからはスムーズに進んで、今日配達されることになっていた。

 何ごとでも、最初(だけ)はわくわくするものである。事前に花切り鋏も購い、今日はどんな花が届いてるんだろうと思って仕事から帰ると、届いていない。

 まだ受付時間中であることを確認してチラシにあった番号に電話すると、さんざん呼び出し音が鳴った末に、メッセージすら残せない留守電が出るばかりだ。

 仕方ないのでまたメールで連絡した。

 この地域の配達日は今日なのだが、明日以降に配達してくれるのだろうか。
 当然明日配達するのが通常の商道徳だとは思うのだが、配達ルートが決まっている上に初めての配達なので、もしかすると「改めて3週間後(配達日の配列上そうなってしまう)からということでお願いします」みたいなことにならないとも限らない。

 そう言われたら、こちらはどう出るべきか。

 ささやかな生活の潤いを求めて、それがまたストレスを生む。低調な日々たる所以である。