◆自殺する人の多い集団

 アメリカ陸軍(兵力70万人)で2009年の自殺者が過去最多を記録したという。

 アフガニスタンイラクなどでの戦闘体験によるPTSDうつ病などが増え、自殺者は 160 人にのぼったらしい(朝日新聞)。

 だが、その割合を日本の人口に換算してみると、3万人を切る。

 70万:160 ≒ 1億3000万:3万弱

 これが何を意味するかおわかりだろうか。

 そう、戦争による極限状況をくぐり抜けて苦しみ抜いた挙句に自殺する人は、この「平和な」日本で自殺する人より少ないのである。

 2009年の日本の自殺者は3万2753人(警察庁)。

 アメリカ陸軍における自殺者の多さに警鐘を鳴らしているこの記事が、そのことに触れていないのに驚いた。全世界に軍を展開し、2つの戦争を抱える国の軍隊のほうが、日本よりも精神的に「健康」であるということになる。

 まあ、陸軍は若くて屈強な男たちが中心である。日本全体はそうではない。ただ、一方では、圧倒的に自殺率が低い女性が人口の半数以上を占めているのにこの数字である。

 日本で生きていくのは、戦争体験より過酷なのかもしれないのだ。