◆なんだか「暑い」 または 異郷も故国か

 大阪を出るとき、「なま暖かい日」と題して書こうと思っていたが、そうこうするうちに暑くなってきた。
 ここ神奈川では、セーターを着ているのも辛い。大阪でもおそらく同じだろう。

 にもかかわらず、多くの人は相変わらずのコート姿である。中にはマフラーを巻いている人なんかもいて、ちょっと信じられない思いがした。

 今日暖かいのは予報で聞いていた。でも、これほどとは思わなかったし、3日間ずっと暖かい日が続くとも限らないので、念のためにとコートを持ってきたのだが、大失敗だった。ほんと、煩わしい荷物になるだけである。

 いったい何℃あるんだろう?
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 久しぶりに乗った新幹線は、京都から新横浜まで2時間もかからない。パソコンを広げてのんびり仕事をしようかと思っていたが、断続的に景色を見たり本を読んだりしていただけで着いてしまった。

 あらぬことどもを思った中で、一つの想念だけを記しておく。

 「こんな、どうでもいいような何でもない場所の隈々にまで家が建ち、人が住んでいるんだなあ」ということ。
 そんな家のひとつひとつが、何千万円とかするのだ。

 日本全国、訪れたことのない都道府県は一つだけだが、その一方、ミクロに見ると、ほとんどの場所は訪れたこともなく、今後永久に縁ができることもあるまい。
 新幹線の沿線なんか、その最たるものである。

 まさにその新幹線の沿線に、自分の実家があることがまた、己の卑小性を想起させる。
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 新横浜を降りてすぐ、駅員に尋ねごとをするときに、アクセントを切り替えなかったことに気づいた。
 エスカレータでぼんやりと右に立つと、左にずらっと列ができていた。
 横浜線なんかに乗っていると、ソウルにいるんだか日本にいるんだかわからないなあと思った。

 思えば古人は、2週間歩かなければここへ到達しなかったのである。

 この異郷もまた故国であることが、妙に不思議に感じられる。