■10年一昔・・・なのかな?

 新しい車が発売されたからと、ディーラーのセールスマンが家に来たらしく、ポストに宛名のないカタログなどが入っていた。
 今の車を購入したときの担当者が別の店舗に転勤したので、他の営業に引き継ぐと言っていたのだが、その通り、顔も名前も知らない人の名刺が添えてあった。

 前の担当が(おそらく)一度も家に来たことがないことを思えば、営業マンとしては立派なのかもしれない。それとも単に流儀が古いだけだろうか。

 ちょうど近所で用事があったので、帰りにディーラーに寄った。「コーヒーでも飲んで帰ろう」という目論見は外れ、車を見ているうちに試乗に誘われて乗ることになった。
 ここはいつも一人で試乗させてくれる。気を遣わなくていいのでありがたい。

 昨今流行りのプッシュボタンでエンジンを始動。動き出そうと軽くゆっくりアクセルを踏んでみて、ものすごいトルクにまず驚いた。
 やたらアクセルが軽いとかローギアが低いとかの味付けによるものではない。

 ターボがついているとはいえ、たかだか2リットルの排気量である。だが、往年の高回転型(しかもタイムラグ付き)ターボと違い、3リットルエンジンをしのぐような35kgm以上というトルクを、わずか1500rpmで発生するのだ。しかもそれが4200rpmまで続く。
 そんなに回すことはほとんどないから、これはすなわち、車が動き出してからずっとそんなトルクが持続しているということになる。

 何もかもがかっちりとしており、ダイレクトで切れ味も鋭い。それでいて乗り心地も悪くない。重量級の車なのだが、重さなんかないみたいに俊敏に走る。
 一応は満足して乗っている今の車が、もっさりと鈍重に感じられた。反応が半呼吸〜一呼吸違うのである。

 試乗後、別の若い営業マンに感想を聞かれ、思わず「いやあ、すばらしかった」と言ってしまった。

 車の試乗が趣味みたいな時期もあったが、ほぼ手放しで「これはいい」と思った車はまだ2台目だと思う。

 1台目は、まったく買えもしないのに昔試乗した BMW530i。「ああ、こんないい車が世の中にあるんだ」と感動したのをいまだに覚えている。
 その次が今日。少し車の性格は異なるけれど。

 今の車は9年目に入っているが、手の届く範囲に欲しい車はなかったので、このままもう数年は乗るつもりだ。
 でも、欲しいと思える車が現れたのはいいことかもしれない。少なくとも数年は買わないし、買うときにはもっとずっと安い車を買うことになると思うのだが。