●誰が電気自動車を殺したか?

 たとえばマイケル・ムーアが製作・監督していれば、もっとセンセーショナルでおもしろいドキュメンタリーになったと思う。

 だが、この映画は、眉に唾をつけて見なくていいし、十分おもしろい。

 こんなことがあったなんて、迂闊にもまったく知らなかった。街頭インタビューされる人たちが口々に語るように、アメリカに住んでいてすらわからなかったのだから、当然かもしれないとも思う。
 でもやはり、うまく伝えなかったマスコミの責任も大きいのではないか。

 メディアに洗脳されて、水素を利用した燃料電池車が次世代の本命だと思い続けてきた。
 しかし、まもなく2010年、もう量産車が路上を走っていてもいいころなのに、いっこうにその気配がない。おそらくは、2020年になってもそう変わらないのではないだろうか。

 この映画で逆洗脳されたわけではないけれど、考えてみれば水素を使うというのはデメリットが大きすぎることに気づく。
 自分たちの利益と販売網を守りたいために、石油会社が後押ししているというのも、容易に想像できる。

 まもなく実用化されるプラグインハイブリッド、そして、ハイブリッドですらないプラグイン電気自動車が、おそらくは次の本命となるのだろう。

 その「未来の車」たるプラグイン電気自動車が、すでに10年以上前、実際にアメリカの路上を走り、トム・ハンクスメル・ギブソンを始めとするユーザたちに愛されていたという事実には驚くし、それを自分が知らなかったことにも驚かざるをえない。

 今の車にできるだけ長く乗り続けたいと思う。次に買う車は、一度(正確には二度らしいが)殺されてから甦った、プラグイン電気自動車になることを願いつつ・・・

(Who Killed the Electric Car?, 2006 U.S.A.)