◆サプライズな誕生日プレゼント
誕生日。
「おめでとう」もなければプレゼントもケーキもなし。でもまあ、とりあえず欲しいものもない。
仕事から帰宅後、家人からはおめでとうを言ってもらったけれど、とうの昔からめでたい年でもなくなっている。
そんな中、サプライズな誕生日プレゼントが届いた。自分の書いたエッセイが載ったムック本(定価をつけて販売するらしいのだが、こんなもの誰が買うんだろう?)と、日本酒を18升(32.4リットル)。
お酒は3回に分けて順次送られてくるらしい。
飲めないのに。
いつのことだったろう(今調べると4か月ほど前だ)、菊正宗の宣伝に使うというエッセイを募集する広告があったので、おもしろ半分に応募してみたのだ。
とはいえ、入選する自信はあった。何しろ、菊正宗をこれでもかというぐらい持ち上げた、宣伝に使うにはもってこいの文章なのだ。しかも、自分で言うのも何だけど、ちょっとひねってある。
あまりにもわざとらしくて没になる可能性もあったが、やっぱりというか、選ばれてしまった(50人も選ばれてるんだけど)。
だがもちろん、応募したことなどすっかり忘れていた。応募してからしばらくは、何か言ってくるかと少しは気になっていたし、もうちょっと経つと、「これはきっと、すっかり忘れたころに入選の通知があるに違いない」と思っていた。
しかし、実際に通知が来たのは、もはやそんなことを考えもしなくなってからである。
まあ、「すっかり忘れたころに」は、当たっていたことになる。
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運命の恩師(の一人)のお年を初めて知ったときのその数字が、今の私の年齢だ。当時の先生には並ぶべくもないけれど、この年には何か特別なことがあるような気が以前からしていた。
いやもちろん、宣伝のためのつまらぬエッセイコンテストに入選したことが特別なのではない。だが、誕生日の朝に(朝なのだ)封筒が届いて始まったこの年齢において、もしかしたら何か未来が開けるかもしれないというような、妙な幸福感がほんのちょっとあったのも事実だ。3分間ぐらいは。
これを機会に、作文の募集なんかがあればせっせと応募してみようかと思っている。次回はタバコを10カートンとかもらえるかもしれない。
いや、もちろん、タバコも吸わないんですけど。