★unimpressive
カナダのカルガリー国際空港で車を借りた。
「Webチェックイン」を日本で済ませているから「5分とお待たせしません」という約束は反故にされ、いつともわからぬ貸し出しを待たされた話は書いた。
結局は、予約していたスペックにこだわらないということで、1時間あまり待っただけですみ、カーナビがないことを除けば、予定通りの車になった。
車種は指定できないので、ウェブサイトにある Ford Taurus とかを漠然と予想していた。
実際の車は、トヨタのカムリ。
カナダにまで来てトヨタの車なんかに乗りたくない。
「さんざん待たされてこれかよ」という落胆と、「でもまあ安心といえば安心だよな」という気分とが交錯した。
地下の狭い駐車場からトランスカナダハイウェイまで、1600kmあまりを走った感想は、やはり、unimpressive の一言に尽きた。
同じように北米でトヨタの車を借りた村上春樹氏が抱いた感想だ。
しかしながら、そういうくくり方はやはり失礼だろう。逆にいえば、これほどよくできた車もない。なにもかもをそつなくこなす、ぱっとしないがそこそこ優秀な副委員長のような車だ。
室内は広いが、取り回しは楽。エンジンは静かで極めてスムーズ。乗り心地もすこぶるよい。踏めばそれなりに律儀に加速するし、ブレーキもじんわりしっかりと効く。
さすがにハンドリングやコーナリングには不満もあるものの、それらは乗り心地とのトレードオフであろうから仕方がない。
他社より(おそらくは)安い価格でこういう車を供給し、しかも(たぶん)トラブルや故障が少ないというのは、やはり大したものである。
Fun to Drive はないし、デザインにも感心しないが、ヒトとモノを快適に運ぶ道具としてはこれでいいのだろうとも思う(でも、Fun to Drive ってトヨタのキャッチコピーじゃなかったっけ?)。
そうそう、燃費もよかった。きちんと計算できないのだが、14km/l ぐらいだったのではないか。
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ちょっと大袈裟に言えば、カナディアンロッキーはどこの駐車場もトヨタカムリで溢れていた。おそらくは、そのほとんどがレンタカーだと思う。他社の太刀打ちできない安い価格で、大量に大手レンタカー会社に供給されたからだろう。
お蔭で、自分の車がどれだったか、戸惑うこともしょっちゅうだった。
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帰国して自分の車に乗ると、狭い。サイズはかなり小さいが、取り回しは同じぐらい。乗り心地は比べるべくもなく悪い。価格も高い。
でも、次にカムリのような車を買うかというと、絶対買わないと思う。以前のようには車に興味を持たなくなった今でも、それは変わらない。
車は ——少なくとも体に馴染むまでは—— impressive なものでなければならない。それがたとえ、欠点が目立つということであっても。