★あやうく冤罪

 証拠なく痴漢の汚名を受けていた防衛医科大学の教授(この事件のために休職中)に対し、最高裁判所が無罪の判決を出した。
 最高裁が事実認定にまで踏み込んで逆転判決を出すのは極めて異例のことだという。

 一審二審の判決は、懲役1年10か月の実刑!(無実を訴えると「反省していないから厳罰」という奇妙なことになってしまうからだろう)だし、最高裁の判決も3対2の多数決で決まったということだから、教授は紙一重のところで刑務所での服役を免れたことになる。

 有罪なら、痴漢の汚名をきせられて、仕事は懲戒解雇、退職金も年金も?なくなり、警察や検察や裁判所を恨みながら、失意の刑務所で「懲」らしめのための「役」務を強制されたことになる。
 出てきてからの人生だってどんなものになるか・・・

 それが地獄でなくてなんであろう。

 そして、ほんとうに瀬戸際のところで地獄から日常へ帰還しても、待っているのは天国ではない。

 こうして書いている私ですら、教授がほんとうに「無実」かどうか知る術はないと思ってしまうのだ。
 「怪しい」と思っている人だってたくさんいるだろう。

 だが、そもそも警察が捕まえなければ、検察が起訴しなければ、一審二審が有罪判決を下さなければ、この教授が無実かどうかとか怪しいかどうかなんて、ほとんど誰も、考えも想像もしないのだ。

 もともとなんら証拠はない。

 にもかかわらず、被害者の証言だけで逮捕したり起訴したり有罪判決を書けたりするということ自体が信じられない。
 そんなことが可能なら、気に入らないと思った男は痴漢にしてしまうのが一番だということになってしまうではないか。
 現実に、電車内での携帯電話の使用を注意され、注意した男性を痴漢に仕立て上げた女がいた。
 初めからお金を脅し取る目的で、無実の男性を痴漢にしたカップルもいた。

 なんの証拠もないのに(仮にあってもでっちあげかもしれないのに)、疑われた事実は残り、法制度からは決して「無実」だとは言ってもらえない。たとえ無罪であっても。

 心の底から恐怖がこみ上げてくる。