◆幻の秘密兵器と幻の鳥

 いない野鳥を探しながら、川沿いの谷をのんびりと平和に歩いていると、低音でドスの利いたヘリのローター音が上空から聞こえてきた。

 相当大きな音である。しかも何だかハモっている。

 おそらくは、メインローターが2つある、自衛隊の輸送ヘリだと見当をつけた。

 飛行機にも詳しいリーダーに、「たぶん、チヌークだと思います」とか知ったかぶりをして言っていると、航空ショーでしか見たことのないようなヘリの編隊が上空を通過した。

 何のことはない、ローターの数は2つどころか、全部で7〜8つもあるのである。道理で音もでかくてハモっているはずだ。

 ふと思いついて慌ててカメラを上空に向け、後尾の3機だけ撮せた。
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 家に帰ってパソコンで写真を見ると、偶然にも、ヘリと一緒に鳥が写っていた。
 しかも、露出を変えた3枚連写の3枚ともに写っていて、羽ばたきながらちょうどヘリと交差する形に移動しているのが手に取るようにわかる。
 もちろん、高度は違うんだろうけど。

 中でも2枚目の、大きく羽を広げた写真(実際の写真はもっと高解像度・高画質です)に目を引かれた。

 翼下面端に白い色を持つ黒い鳥・・・、しかもこの大きさと形はブッポウソウではないのか !?

 まだ1度も見たことのない鳥が、こんな形で写真に残ることがあるなんて・・・ 珍しくちょっと興奮して、家族で盛り上がった。

 だが、件のリーダーにメールしてブッポウソウには触れずに同定を仰ぐと、早速「小生の見立てはイカルです」とのお返事。
 言われてみて調べてみれば、確かにそんな感じ。

 さすがに、ブッポウソウとの衝撃の出会いがこんな形になるなどということはないのだ。

 でも、たとえイカルにせよ、こんなふうに写ることがあるというのは面白かった。
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 さっき、写真のヘリを調べてみた。無知ゆえ、航空自衛隊のサイトを見てみたのだが、該当機はない。「すわ、秘密兵器か」とはさすがに思わなかった。そういえば、ヘリというのはどちらかといえば陸上自衛隊の装備である。

 陸自のサイトはやたらに重くて、光ファイバーでも表示までかなり待たされる。こんなつまらないページを作って予算を使うのはやめてほしい。

 ヘリを下から撮した写真というのは掲載されておらず、見当をつけてイメージ検索をしてみる。それでも、なかなかわかりやすい写真に出会えない。どうかすると、鳥の同定より難しいぐらいだ。

 結局、異様に細身の、針のような攻撃ヘリは、コブラと呼ばれる AH-1S、最後尾の4枚ローターは、ブラックホーク(『ブラックホーク・ダウン』!(2001 U.S.A.))と呼ばれる UH-60JA らしいことがわかった。

 こんなヘリが頭の上を飛んだのは初めてかもしれない。しかもイカルと交差して。
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 こういった航空機が、今後も宝の持ち腐れであり続けることを切に願う。小鳥たちとともに。