■1人で奈良、電車?

 もう少しはどこかへ行きたいと、奈良に行ってきた。

 「ならまち」というのが、古い街並みで有名だというのを最近知ったのだ。

 さすがに近いので、奈良には何度か行ったことがあるものの、奈良町散策なんて考えたこともなかった。

 というわけで、車に自転車を積んで出かける。

 近畿自動車道を降りて阪奈道路経由でと、昔のルートを考えていたのだが、カーナビで見ると阪奈道路にかかるまでのところであちこち渋滞しているようなので、近畿自動車道阪神高速第二阪奈有料道路(阪奈トンネル)という、最速ルートを取ることにする。家から奈良まで45分ほど。

 これで何と、有料道路代が計1500円もかかるのだ。往復だと3000円。駐車場代が1000円でガソリン代が約1000円だとすると、1人でぶらっと奈良を往復するだけで5千円もかかることになる。

 それだけあれば、あんなこともできる、こんなこともできると思ってしまう貧乏性なので、おもしろくもない孤独な奈良散策に費やすには大きすぎる費用だ。もちろん、5千円には一切の飲食代などは含んでいない。

 で、案の定、おもしろくもない孤独な奈良散策になった。まあ、「格子の家」という町屋を見学できたのはよかった。
 あと、思いのほか涼しくて、雨にも遭わなかったのは幸運かもしれない。

 猿沢の池のほとりに座って、アクエリアスフリースタイルを飲む。
 けたたましい鳴き声に気づいて双眼鏡を取り出すと、案の定、カイツブリが2羽。それで思いついて、行きにも気になっていた、池中央の噴水横の岩の上にある鶴の彫刻にレンズを向けると、これが何と、生身のアオサギであった。
 私の視力も視力だが、アオサギアオサギである。
 
 もうじゅうぶん、というほどならまちを縦横無尽に走り回っても、1時間ほどしか経っていない。むしろ歩いてまわるべきなのかな、とも思う。

 これなら時間貸しの駐車場に入れればよかったと後悔しつつ、東大寺の周囲をポタリング

 帰りは1500円の高速代を惜しんで、木津・四条畷・寝屋川経由で帰宅。1時間40分ぐらいかかった。

 調べてみると、うちから奈良まで、公共交通機関を使うとおよそ1500円かかる。往復3000円。時間も1時間40分ほどかかりそうだ。

 1人でなら、電車で行った方がいいかとも思ったが、1人ですら、高速を使わなければ車の方がよほど安いということになってしまう。時間も変わらない。自転車を電車に積み込むのも一苦労である。

 これは要するに、電車賃やバス代が高すぎるのだ。あるいはもしかすると、ガソリン代が安すぎるのである。
 こんな料金設定にしておいて、クルマに乗らないで電車に乗りましょう、といっても説得力がない。われわれは(見た目の)経済原則からは逃れられないのだ。

 もちろん個人的には歓迎しないけれど、ガソリン代を大幅に上げて、その分を公共交通への補助に回すべきである。経済動機に基づく環境シフト策を採らないで、倫理や道徳に訴えても効果は限られている。