■近鉄「特急」

 昨日、近鉄に乗った。正式名称、近畿日本鉄道

 関西の人以外にはあまりなじみがないかもしれないが、プロ野球の「近鉄バファローズ」の近鉄である。でも、近鉄バファローズって今もあるのかな?

 という認識でもおわかりの通り、生粋の?関西人の私にとっても実はほとんどなじみがない。関西で(日本中で、だったかも)もっとも営業距離の長い私鉄のはずなんだけれど。

 その近鉄、関西の私鉄では多分唯一、特急料金を取る。まあ、大阪から伊勢志摩(三重県)とか名古屋とかに行くんならわからないでもない。実際、そういうのがあるから取るのだと思っていた。

 ところが、奈良から大阪に行くのにも特急があって、しかも、奈良始発で大阪終着なのだ(もちろん逆もある)。こんな短い距離(快速急行で36分)を走る特急で特急料金を取るのか?

 たぶん10年ぶりぐらいに乗った近鉄。行きは大阪の難波から快速急行に乗ったのだが、帰りはタイミングの関係で特急に乗るハメになった。

 乗り込むと、うるさくしつこく、「特急券が必要」「全席指定」を繰り返す。前者はいいとしても、後者は気になる。「お手持ちの特急券に指定された座席にお座りください」と、念が入っている。もちろん特急券なんか持っていない。

 差額を払えばいいやと気楽に構えていたのだが、心配になってくる。持ってないと追徴金を取られたりしないのだろうか。

 運転席が近かったので、降りて聞こうとすると、同じように降りてくる乗客がちらほら。でも、聞いたのは結局私だけだった。
 要するに、特急料金の500円を払えば乗っていいという。なんだよ。そんなことだったらそれも放送してほしい。何人か客を逃がしてるぞ。

 行楽の帰宅ラッシュの時間帯のはずなのに、車中はガラガラ。数えてみると、私の車両には全部で7人!しか乗っていなかった。それはそうだ。奈良−大阪の距離で500円余分に払おうという奇特な人がそういるわけはない。私だって普通は払わない。

 さらに・・・ これでほんとに「特急」であればまあ許せるのだ。なんと、奈良−大阪間、実測39分。朝乗った快速急行(ダイヤ表示)より3分も遅いのである。これはひどい

 しかも、けっこうな数の駅に停車し、その度ごとに例の「特急券」「全席指定」「お乗り間違えのないように」をしつこく繰り返す。よほど間違える人が多いんだろう。
 睡眠不足で山を歩いて疲れていたのだが、検札まで来るわ放送はうるさいわで寝ていられない。それでなくても40分足らずしか時間がないのに。

 大阪に入り、鶴橋と上本町に停車する。ここから難波まで、まさか余分に500円払う人はまずいない。だが、というか、だから、というか、やはり、さっきの三題噺を繰り返す。要するに「乗るな」ということだ。
 検札は来なかったが、誰かが乗るのを見たら、車掌が来るのだろうか。上本町−難波の2キロで余分に500円。納得できる人はまずいない。えげつない大阪人としょっちゅうトラブルになってなければいいんだけど。

 快速急行は10両編成なのに、特急はたった4両しかない。乗客が少ないからだろう。全車両でもたぶん50人は乗っていない。仮に40人だとすると、特急料金収入計2万円也。

 この電車、走らせなくても何の問題もない。乗客が前後の急行などに分散しても、そちらが混雑する気遣いすらない。
 そして、現状では経営的に大赤字間違いなし。なにせ、2万円のために、余分に1編成、電車を走らせているのだ。運転士と車掌と、終点で座席の向きをひっくり返している人たちの人件費だけで消えそうである。

 乗った乗客も、先述の通り愉快ではない。そして、見ていると、「指定席特急券」など、持っている乗客の方が稀である。当たり前だ。
 頻繁に運行されている都市近郊線に40分足らず乗るために、だれが事前に指定席特急券なんて買うものか。ホームに降りた時点で乗れる電車の中から適切なのを選択するのがふつうだろう。
 私もそうした。だいたい、スルッとKANSAI とか ICOCA とか PiTaPa とかがあって、多くの人が乗車券さえ買わずにホームに降りているのだ。

 少なくとも、大阪−奈良間の特急なんか廃止すればいいと思う。もしかして、京都−奈良間にも特急があるのかな(きっとあるんだろう)。
 それらを廃止するだけで、近鉄の収支はいくらか向上する。代わりに、半分でいいから快速急行でも走らせてくれれば、乗客の利便性もぐんと向上する。

 ファンの支えがあって収支も改善すれば、もしかすると、バファローズだって買い戻せるかもしれない。無理かな?