●露天風呂でも・・・

 北アルプス穂高の麓、平湯温泉で露天風呂に入った。ふつうそんなことはしないのだが、槍ヶ岳?を遠望できる「飛騨・北アルプス自然文化センター」に車を駐めると、間違える人が多いのか、「←30m ひらゆの森」という表示があったのだ。

 何となく気になって行ってみると今風の温泉施設である。前の晩風呂に入っていなくて、その日は車の中で寝る予定だったから、ここで入らないと風呂なしの晩が続くと思って入ってみた。500円。私の金銭感覚としては妥当なのだが、もしかすると安いのかもしれない。

 いちばん驚いたのは、露天の岩風呂につかりながら、ケータイで話している男がいた(もちろん女はいないのだが)ことである。

 露天風呂に電話なんか持ち込むか?

 しかも、会話の内容たるや、「ああ、おれおれ。今どこにいると思う? 温泉に来てるんだ・・・」

 相手がだれかはわからないが、同性の友人のように思えた。こんな電話を露天風呂の中からかけてもらって喜ぶ仕事帰り?の男がどこにいるのだろう?

 後ろからケータイを凝視してみたのだが、ふつうのに見えた。あれで防水なんだろうか。硫黄分なんかも、いかにもキカイに悪そうである。

 しかし、素っ裸でタオルとケータイだけをもって広い露天風呂をうろうろする姿は、控えめに言って滑稽だった。

 そのうち、

「露天風呂内ではマナーモードに設定し、通話はご遠慮ください」

なんてアナウンスが流れたりしないことを祈らざるをえない。