●悲惨なる一族 最終回

 今ごろ見ました。

 このドラマ、どうして時代を現代に持ってこないのか不思議に思っていました。

 唐沢くんの白い巨塔は現代に持ってきてましたよね。

 もちろん、高度成長期の日本の雰囲気を背景にした・・・というのもわかりますが、そこはいくらでも翻案できるし、第一、その点がうまく描写されていたとは到底言えないと思います。

 その象徴が鉄平のヘアスタイル。1960年代の製鉄会社専務のそれではなく、まんま、21世紀のジャニーズ系タレントでした。

 つまらない象徴ですが、それだけでも、時代の雰囲気とか時代考証とかよりも、キムタクのかっこよさで売ろうとしているさもしい根性が見て取れます。
(キムタクって、時代劇に出たことあったっけ? さすがに時代劇ではチョンマゲになるんだろうか?)

 お金はすごくかかっているのに、あまりにもいろんな描写が杜撰で、どうしても60年代には見えない、というドラマを作るぐらいなら、もっとお金をかけずにリアルな現代ドラマとして作れたのではないかと思います。

 で、最終回を見て、「鉄平の血液型は戦時中の集団検査によるもので、よくあった誤りにより間違えられていた」という点をうまく現代に翻案できないために、時代設定を変えなかったのか、という気がしてきました。
(この話が出てきたとき、え!? 鉄平って戦時中!に血液検査を受けてるの?? と多くの視聴者が咄嗟に思ったに違いない。それがすなわち、視聴者を作中へ引き込むことに失敗していることの証だ。)

 さすがに現代ドラマで、「血液型判定が間違ってました」というオチは・・・ ありえないことではないけど、白けてしまいますよね。翻案も難しいかな?

 ドラマはともかく、それにしても山崎豊子。膨大かつ綿密な取材に基づいて壮大な物語を織り上げ、それが時代のやや先を見通すとともに、人間の業の深さを描写しきる筆力にはものすごいものがありますね。

 ただ、そうするとどうしても暗くなる。もっと適当でちゃらんぽらんに考え、生きていくことができたら、悲劇の多くは生まれず、ラクになれるのに。自戒をこめて。