●「無能」な鳥

 鳥に脳みそはない。断言してもよい。少なくとも、思考や理性を司るという人間の前頭葉に当たる部分はない。

 だいたい、うちで飼っている文鳥を例に取ると、どうひいき目に見ても、脳全体の容積が私の小指の先もない。小指の先の1/3ぐらいか? そして、そのほとんどは飛ぶために発達した小脳だ。

 つまりアホである。

 生殺与奪の権利を100%こちらに握られているというのに、何か気に入らないことがあると(とにかくアホなので、何が気に入らないかはこちらにはわからない)、恐竜のように突っかかってくる。
 その時の威嚇の声と怒りの表情といったら、ジュラシックパークに出てきたラプトルも真っ青なくらいだ。

 こんなに可愛がってやっているのに、いったい何がそんなに不満なのだ。

 そんな鳥だが、それでもやはり脳みそがあるんだなあと思うことがいくつかある。

 そのうちの一つは、カゴにカバーをかぶせようとすると、寝る態勢にはいることだ。

 冬の間、寒いので、夜はカゴにカバー(ただのダンボールの箱)をかぶせる。こちらがダンボールを持って近づいただけで、いつもの睡眠用の定位置にパッと飛び移り、瞬時に寝る態勢に入る。
 ああ、こいつにも因果関係というのがわかり、すぐ未来なら予測できるのだなあ、と思う瞬間だ。

 まあでも、しょせん、そんな条件反射程度のことなんだけど。