◆8時間労働は適切か?

 非正規労働やワーキングプア格差社会にフリーターだのニートだの、労働と賃金を巡る問題がかまびすしい。

 そんな中、「8時間働いて8時間は自由時間、8時間睡眠で人間的な生活を」というような文を読んだ。残念ながらどこで読んだか思い出せない。

 労働基準法は、週40時間を超えて労働者を働かせることを禁じている(それを超えると割増賃金を支払う義務がある、いわゆる残業だ)。
 1日8時間×5日間で40時間。週休2日。それが平均的な計算となる。原則として、それ以上働かせてはいけないのだ。

 にもかかわらず、この40時間がまるで「最低40時間は働かなければならない」かのように解釈されている。少なくとも、私の勤務先はそうだ。

 それはそれとして、1日8時間働くとどういうことになるか。「8時間は自由時間」になるのだろうか。もちろん、ならない。

 朝起きてから職場の机に座って仕事を始めるまで、どのぐらい時間がかかるだろうか。もちろん人によってぜんぜん違うだろうが、平均すれば2時間というところではないか。家を出るまで45分、通勤して仕事を始めるまでに1時間15分。

 8時間働く。途中、昼食と休憩で1時間。拘束時間のようなものである。残業がない日でも、30分ぐらいは会社を出(られ)ないだろう。

 帰宅して夕食を終えるまでに2時間。専業主婦(夫)や母親などが家にいて、帰ると暖かい夕飯が待っている場合である。前後の着替えも入れて風呂に30分。

 ここまでで計何時間になるか。14時間である。8時間睡眠をとったら22時間。自由な時間は残り2時間だけだ。

 この試算ですら、おそらくは相当恵まれた条件だろう。多くの人は、睡眠時間を6時間に減らしても自由時間ゼロ、になったりするのではないか。残業したり家事したりしてたら当然そうなる。

 なるほど、労働基準法が週40時間労働を「上限」にしているのは当然だ。それ以上働いてはいけないのである。

 労働者は、1日8時間・週40時間でも働き過ぎである。国が決めた法律でさえ、それを超えて働かせてはならないことになっているのだ。

 あなたは今でも働き過ぎなんです。「最低」週40時間働かせようとするほうが、異常なのです。

参考:労働基準法(以下に例外や抜け道などは種々ありますが)
32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。