★社会主義国?

 いまだにビザが必要な旅行をしたことがない。わたしごときが行けるような時代・場所になれば、日本国籍を持つ者の短期滞在程度ではビザはいらないのだ。改めて、時の流れと日本の強さを思う。
 私が生まれたときには日本人が観光旅行で海外に行けなかったことなど信じられないほどだ。

 初めてヨーロッパへ行ったとき、せめて東ベルリンにでも出かけていれば違っていたのだろうが、もはや旧東ヨーロッパに行ってもビザなど必要ないだろう。

 というわけで?気がつくとベトナムは私が初めて訪れた社会主義国なのであった。「旧」をつける必要もない。

 だが、短い間にちらっと見ただけでは、社会主義国の片鱗すら感じられなかった。デパートにもスーパーにも街にもモノが溢れ、人々はそのモノとお金に群がっていく。
 街を走るバイクのほとんどはホンダかヤマハで、そのディーラーも目につく。
 欧米・日本・韓国資本の一流ホテルが建ち並び、それなりに高級な店では、米ドルが基本通貨となっている。
 もちろん、「トラバント」など走っていない。目にした乗用車の多くはトヨタメルセデスである。

 かろうじておもしろいのは、1階にジバンシーだのグッチだの資生堂だのが入った一流デパートが「国営」だということだろうか。それとて、見てわかるものではなく、ガイドブックに「国営百貨店」と書いてあるのみである。

 ドイモイ(経済刷新政策)が始まってからちょうど20年。もはやこの国に経済政策としての社会主義は存在しないように見える。

 さて、わたしがいつかどこかにビザの必要な旅をする日が来るのだろうか。もしかすると、もう来ないかもしれない。でも、それでいいような気もする。
 たとえ、多くの国々が日本の後を追うように大気や川を汚染し、拝金主義をはびこらせているにしても、一過性のものであれかしと祈りたい。