★「フランス製の大型セスナ」

 世間を騒がせている、マンションやホテルの耐震強度偽装問題。渦中のヒューザー社長、小嶋氏が、飛行機愛好家だという点まで叩かれている。

 誰かが悪いことをすると、「○○容疑者は高級外車を乗り回し」などと、さもそれ自体が悪いことのように報道するのと同じ姿勢だ。
 さして高級ではなくても、ほとんど乗っていなくても、ほぼ例外なくこの表現になる。愚かな記者の偏見と怠慢のなせるワザである。
 マスコミ社員が高給取りであることは周知の通り。自分たちだって「高級外車」を購入することは簡単だろうし、実際に乗っている人もいるだろう。それでも、自分は「乗り回し」ていないからいいのだろうか(笑)

 そんなレベルの低い記者によって書かれた記事だから、吹き出したくなるような記述にも出会う。今週発売の有名週刊誌に、小嶋氏の所有する(厳密にはヒューザーの子会社が所有しているらしい)飛行機が、

 「フランス製の大型セスナ、「SOCATA TBM-700」」

だと載っていたのだ。ご丁寧に、小嶋氏は「セスナの免許」を持っていると書いてある。

 「セスナ」は確かに小型飛行機の代名詞のようになっていて、誤用されることも多いのだが、ここまで荒唐無稽なのは初めて見た。

 言うまでもなく、「セスナ」は、アメリカの航空機製造会社、Cessna 社と、それが製造した飛行機のことである。私が乗っているような小型機からトム・クルーズが乗っているようなビジネスジェットまで幅広く取り扱っている。

 週刊誌の記事は、

 「フランス製の大型トヨタ、「ルノー メガーヌ」」

と書くのと同じぐらいナンセンスだ。もちろん、「セスナの免許」などというものは世界中のどこにも存在しない。「トヨタの免許」が存在しないのと同じだ。

 テレビのニュースでは、「同窓会に行くのにわざわざ仙台まで自家用機で飛ぶという目立ちたがりのパフォーマンス」というような表現で叩かれてもいた。
 小嶋氏が実際に何を考えていたのかは知る由もないが、東京から仙台まで自家用機で飛んだという事実だけで人格を貶められる氏も気の毒だ。
 「SOCATA TBM-700」なら、仙台まで1時間もかからないだろう。社有機として所有しているなら、それを使うのはごく普通の選択である。

 レベルの低いマスコミ報道に囲まれることは不幸だ。もしそれが、情報の受け手自身の鏡であるとすれば、暗澹たる気持ちになる。