●善きアメリカびと

 アメリカからお客さんが来るので、会って適当に話をし、その後ランチも一緒に食べて欲しいと頼まれた。何も堅苦しいことはないし、相手は日本人だというので、気楽に指定された部屋に入っていった。

 が、その部屋にいたのは、同僚たちを除けば、どう見ても日本人には見えない人だった。強いて言えばドイツ人に見えた。まあ、クロード・チアリも Konishiki も日本人だし、こういうこともあろうか、とは思わなかった。もちろん、単に情報が間違っていたのだ。でもなんで?

 Nice to meet you. Please call me 〜. から始まって、アメリカ人1人、日本人4人の会話がえんえんと続く。とはいっても、主にしゃべるのはアメリカ人。2人はほとんどしゃべらない。まるで、どこかの駅前英会話教室のようだ(経験ないけど)。

 いろんな話をした。中でも印象に残ったのは、彼の経歴や興味関心の移り変わりが私とほとんど同じだったこと。もう一つは、今回のアメリカ大統領選挙のことだった。もちろん、間違ってもブッシュに投票するような人ではないが、ケリーに幻想を抱いているわけでもない。要するに、良識派インテリ、善きアメリカびとという感じであった。アメリカ人にありがちな、傲慢さや押し出しの強さも感じさせない。

 作家の島田雅彦氏が、世界中のどこでも、ブッシュ支持者には会ったことがないと書いていた。特にこの夏、アメリカに2か月ぐらい?滞在していたのに、ただの一人もブッシュ支持者はいなかったという。彼の会うような人には、ある程度もののわかった人しかいなかったからだろう。
 それでもブッシュは当選したのだ。前回はともかく、今回は一応正しく選ばれたのだろうと思う。たとえ、得票率が51%(ケリーが48%)であったとしても。

 件のアメリカからのお客さんは、2極化するアメリカ社会を嘆いていた。日本の新聞報道などにもあったとおり、ブッシュを勝たせたのは、「中絶を認めない」「同性カップルを認めない」という保守派キリスト教的道徳性だったという。前者の話はややこしくなるので省くが、同性カップルを認めないなどという人は、何を考えているのだろうか。あんたに関係ないじゃないか。
 この日本でさえ、カルーセル麻紀氏が戸籍上も女になれるような時代なのだ(戸籍制度の問題も、ややこしくなるので省く)

 それにしてもブッシュ当選。遅まきながら、joke でも nightmare でもないことに愕然とする。ウクライナでは、大統領選をやり直すことになりそうだ。今回はともかく、前回のアメリカ大統領選挙もやり直せばよかったのに・・・ 今や、何を言っても虚しいけれど。

 でも、善きアメリカびとと知り合えたことは収穫だった。心の準備もなくて疲れたが、気持ちのいい疲れだった。