◆ジャンボジェットが都心を低空飛行

 東京都湾岸地域在住の方は実際に見たり聞いたりなさったかもしれないが、2004年9月19日未明、「オリエント・タイ航空のジャンボ機(ボーイング747型)が」「羽田空港に着陸前に、通常のルートを大きく外れ、約5分間にわたって超低空飛行をしていたことが分かった。東京タワー(高さ333メートル)と高度差約200メートルまで接近していた」(asahi.com)らしい。

 当日から、目撃者の証言が一部ネットで話題になっていて、いったい何事かと盛り上がっていたが、私自身は報道を目にしなかったので、ことの真偽がわからなかった。

 夜中の0時14分に東京湾上空で羽田空港への目視による進入の許可を受け、その1分後には着陸許可も出たが、直接羽田には向かわず、「荒川河口上空」から、「日本橋や東京タワー、JR品川駅付近を高度600〜400メートルで飛行」(同)、都合、10分ほど湾岸に沿って逆U字型に飛行した後、羽田へ着陸したという。

 驚いたのは、これが問題にはなっているものの、国土交通省が「機長も管制官にも、航空法上の違法行為はない」(同)としている点だ。一瞬、何かの間違いでは?と思った。
 航空法上、人や家屋の密集地では、飛行機から半径600メートル以内にある一番高い建物と300メートル以上の高度差を確保する必要がある。つまり、東京タワー上を200メートルの高度差で飛ぶことは許されていない。
 ただしこれは、離陸や着陸を行う場合を除いて、ということになっている。当然といえば当然だ。でなければ、大阪空港に着陸する飛行機は、たぶんすべて、航空法違反になってしまう。今回も、「着陸を行う場合」だったから、合法なのだろう。それにしても、他の条項にもぜんぜん触れないのだろうか?

 いずれにせよ、そんな勝手な着陸経路をとり、都市の上を超低空飛行してもいいとするならば、それは法律に欠陥があると言わざるを得ない。なんとなれば、今回の件で機長は業務停止にされ、国交省も再発防止に努めるため調査に乗り出したというのである。「合法的」に飛行しただけなのに・・・

 「オリエント・タイ航空側は国交省に対し、「乗務員は日本上空を飛行する際の注意点をきちんと把握していなかった」と謝罪したという」(同)。それだけ読めば、機長が東京の夜景を楽しみたくて迂回着陸したようにも読めてしまうのがおもしろい。案外、そうだったりして。

 たぶん、管制塔は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていたと想像するのだが、どういう対処をしたのだろう? ふつうはありえないルートだし、もしテロリストが操縦したりしていたとしたら、容易に国会議事堂にでもサンシャイン60にでも突っ込めたことになる。自衛隊スクランブル(緊急発進)をかけたのだろうか。いずれにしても間に合わなかったかもしれないが。

 まあとにかく、何事もなくてよかった。これだけ大騒ぎになっても、機長が自ら「いや、夜景が見たかったので・・・」と言ったりすると、ほのぼのしておもしろいんだけれど。