◆遠い記憶

 ↓を書いていて、ボローニャのことが気になった。

 イタリア雑貨カフェのオーナーがボローニャに留学していたというのを聞いて、ああ、ボローニャなら行ったことがあるなあと思い、具体的な名所や風景も頭に浮かんでいた。

 こんなところに車が入っていいのかというような歴史的建造物群に囲まれた街の中心地にあるホテルに泊まり、歩いて近くのアレーナ(ローマのコロッセオのような円形闘技場)なんかに行ったのを鮮明に覚えている。

 あれはボローニャのどの辺だったっけ? すぐ近くに泊まったホテルもあるよなあ・・・と思って Google Map を見るが、アレーナがまったく見当たらない。

 そんな馬鹿なと思いながら航空写真にしたりして探すが、徒労である。

 イタリアには3回しか行っていないはずだ。1度目は家族で、2度目は両親も連れて、3度目は出張である。

 ボローニャに行ったときは両親はいなかったから・・・と当時の旅行メモを引っ張り出して見ると、なんと、ボローニャには立ち寄った形跡すらない。

 まさかと思って両親も連れて行った年のメモを見ると、ボローニャという単語は出てくるが、街の記述はない。

 要するに、フィレンツェからベネチアへ行くときに通過しただけに過ぎなかった。ボローニャまではカーブの多い道路で、そこを過ぎるとまっすぐだったとか書いてある。
 また、到着したベネチアのホテルの名前もなぜかボローニャで、そこには2年連続で泊まっている。

 通過とホテル名でボローニャに行った気になっていたのか・・・

 では、あの記憶の街はどこなのだと調べると、その前の年、モナコからベネチアへ向かう途中で泊まったベローナであった(ちなみに、泊まったホテルの名前はミラノである。なんでそんなややこしい名前をつけるんだろう)。

 イタリア雑貨カフェのオーナーと会話する以前から、ベローナなんて地名は頭の中からすっかり消え、あの素敵な街は完全にボローニャになってしまっていたようだ。


 記憶なんてあてにならないものである。でも、こんなことから思い出をたどれたのは悪くない。