●失われた?ブッポウソウを求めて

 ブッポウソウという鳥がいる。体長がハトより少しだけ小さくて、体つきはスリムな、濃い青色系の美しい鳥だ。
 小鳥としては最大級である(いや、小鳥と言えるかどうかちょっと微妙な大きさかも)。

 好きな鳥の一つだ・・・と言いたいのだが、何しろ実際に見たことすらないので、好きと言えるかどうかわからない。

 自宅周辺では一切お目にかかれない珍しい鳥である。
 ただ、繁殖期に出向くと必ず見ることができる場所があると教えていただいたので、今年は思い切って出かけることにした。
 まあ、岡山県だから「思い切って」というほどのことはない。だが、鳥を求めて旅行をすること自体、私にとってはまずないことで、それだけ情熱が大きいことは間違いないだろう。

 珍しく、家人も息子も行きたいという。3人のスケジュールを合わせると7月末になってしまった。

 ちょっと遅くないかなと思ったものの、ウェブで調べると、「ヒナが巣立って個体数が一番多い時期」みたいに書いてあるので、ダメもとで出かけてみた。一泊ではあるが、家族で旅行するのも久しぶりだし。

 しかし、ダメもととはいえ、これほどダメだとは思っていなかった。個体数が多いかどうか知らないが、たとえ数十羽くらい?いるとしても、広大な山里で見つけるのは至難の業である。

 もともと、あちこちに繁殖用の巣箱がかけてあり、そこで育雛するからこそ確実に見ることができるのだ。ヒナに餌を与えるため、親は一日に150回ほども巣箱を往復するという。

 でも、ヒナが巣立った後は、もぬけの殻。
 ブッポウソウにとっての巣箱は、われわれにとっての家のようなものではなく、巣立ちまでの仮の宿りなので、ヒナが飛べるようになってしまうと、基本的には戻ってこない。

 最初に立ち寄った道の駅で、「もう10日ほど前からどんどん巣立って、今は「カメラマン」もいない」と言われたときには相当脱力した。
 ブッポウソウがいる場所を探したければ、「カメラマン」が集まっている場所を探すのが一番だからである。

 結局、この時期にブッポウソウを見に来た間抜けはわれわれだけだったらしく、次に立ち寄った「ブッポウソウ案内所」はまったくの無人だったし、「カメラマン」やバーダー(バードウォッチャー)にも一人として出会わなかった。

 それでも、つい先日、24日まではまだ巣立ち前のヒナもいたらしい。
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 諦めきれず・・・というわけでもないが、一番いいポイントだと言われている場所に車を駐めて、ブッポウソウを探す。
 人も!鳥も、やはりまったく気配すらない・・・と思っていると、家人が稜線上を飛んでいく2羽の鳥を見つけた。

 双眼鏡を向けるが、遠すぎて何かわからない。黒い鳥に見えるけれど、飛び方がカラスとは違う・・・と見るうち、紛うことなき翼の白斑が目を射た。

 ブッポウソウだ!

 山頂付近にある薄緑のアンテナにとまる。結局、3羽とまった。望遠鏡を向けてみても、黒っぽい鳥がいることしかわからない。

 だが、ともかくも、ブッポウソウ初認。まったくのボウズよりはよほどいい。
 家人と息子は白斑を見ていないので、見えたのは単なる黒っぽい鳥のシルエットだけなんだけれど。
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 それだけが目的ではなかったにせよ、高速道路を走ってホテルに泊まってこの結果。

 うーん。来年こそは、高速道路を使わずに日帰りとかキャンプとかで繁殖まっさかりの時期に来ようと思った。