★時代の空気
新日本海フェリーはなかなか素晴らしく、不満はほとんどない。一番安いチケットを買ったのだが、そのベッドさえ十分快適で、今夜(から?)の車中泊と比べれば天国である。
ただし、運航時刻の設定には疑問がある。
京都の舞鶴を真夜中の0時30分に出て、北海道の小樽には夜の8時45分に着く。夜中の1時までは放送で寝かせてくれないし、小樽に着いたらすぐどこかに泊まるしかない。
小樽に朝着くとか昼着くとか、何とでも組めそうなものなのだが、どうしてこういう設定になってるんだろう。せめて、舞鶴発を22時とかにすれば健全に寝ることもできるし、小樽着だって夕方6時過ぎになる。そうすれば現地でおいしいお寿司を食べることもできるだろう。
あっ、船内で夕食を食べさせるのが目的なのかな・・・
それはともかく、小樽に着くと、すぐ寝る場所を探さねばならない。寝るためだけにホテルを取るのももったいないので、どこか道の駅で車中泊をしようと考えると、一番近いのは余市町の「スペース・アップルよいち」であった。
なぜ余市が「スペース」なのかわからなかったが、宇宙飛行士の毛利衛さんの生まれ故郷らしい。「余市宇宙記念館」なんかもあるようだ。
・・・と思って地図を見ていると、道の駅のすぐ隣がニッカウヰスキーの余市蒸溜所である。
北海道に行くと決めたのも偶然だし、そもそも余市に行く予定などなかった。だいたい、その場所すら知らず、なんとなく釧路や帯広のあたりだと思っていた。
でも、成り行きとはいえこうなった以上、やっぱり蒸溜所は見学するだろう。
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今年の3月下旬、家人が広島県の鞆の浦へ行きたいというので2人で行った。その際、近くの竹原に古い街並みが残っているというので訪ねると、そこはニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝の故郷で、生家だという酒蔵があったりした。
折りからの「マッサン」ブームで対応できなくなったため、酒蔵の見学は中断しているというような盛況である。「マッサン」を一度も見たことがないわれわれも興味をそそられ、彼や、その妻リタの生涯をたどる資料なんかをそれなりに熱心に見た。
5か月後に今度は余市である。
もともと酒はまったく飲めないし、ウイスキーにもほとんど興味はない。今だに「マッサン」は一話も見たことがない。ただ、プロモーションなどで部分的には目にしたことがあるので、リタ役の女優さんが綺麗なのが気になる程度だ。
それでも、余市蒸溜所の横で車中泊するのなら、北海道観光のスタートは当然そこにならざるを得ない。
ニッカウヰスキーとその創業者夫妻がこれほど脚光を浴びた年に、何の興味もなかった者が遠く離れたゆかりの地を2つとも訪れる。
偶然とはいえそういうことが起こるのが、時代の空気に影響されたということなんだろうと思う。
導かれた・・・といえば聞こえはいいが、実際は、流されているというところだ。
そう考えると、「主体的」なはずの自身の行動の多くが、実は他から規定されていることに改めて気づかされる。
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下船が始まった。