●お大尽宣言?

 久しぶりに蕎麦でも食べようと思い、やや不便な場所にある人気の店に向かった。
 初めから、混んでいるようだったら近くのイタリアンに変更するつもりで、自分を「蕎麦の口」にしないよう心がけていた。

 案の定というか、店の外に人が溢れている。ちゃんと確認しなかったが、7台ある駐車場も、あれでは満車だったろう。

 早々に諦めて左折し、イタリアンの駐車場に向かう。区画の番号を忘れていることに気づいたが、なに、現場に行けば思い出すだろうと思っていたら、実際思い出した。
 面白いものである。

 入店前に看板を見て、小エビのトマトソースとハマグリのペペロンチーノで少し迷った。結局、トマトソースの誘惑が勝って前者にした。

 訪れるのはまだ数度目だ。前菜はついているものの、デザートなしのパスタランチが1580円と、ちょっと値が張るのである。数年前なら対象外の店だ。

 たぶんそのせいだろう、いつ行っても混んでいるということがない。2台しかない駐車場も、これまでは少なくともどちらかが空いていた。

 しかし、この店には倹約家の私を通わせる何かがある。

 それが何かわからなかったのだが、昨日はその一端が解明された気がした。

 出てきた「小エビ」に仰天したのである。そういう名前のスパゲティを何度も食べたことがあるが、丸くなった海老の外径は、大きくても2センチ内外であった。3センチということはまずない。
 ところが、出てきた小エビはゆうに6センチはありそうだ。ボリュームにすると、2センチの海老の27倍ということになる(計算あってますよね?)。

 いつもうちで海老フライにして食べるぐらいの大きさだ。
 それがなんと5つも入っていて、身も締まっている。多すぎるぐらいだったが、トマトソースもおいしくて、ぜんぶ食べるとお腹が一杯になってしまった。

 これはどう見ても名前を間違えている。さすがに「大海老の……」と言えないんだったら、「大ぶりのエビの……」(「の」が多いな)にしてもいいんじゃないか。
 数だって、3つでいい。
 それとも、この驚きが魅力なのだろうか。

 これだと、ハマグリのほうはいったいどんなことになっているんだろうと気になった。

 あんなエビを使っていたのでは、大して儲かるまい。
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 プロフィールにあるとおり、「安くておいしいランチ」を常に探している。数年前までは1000円の壁があった。
 それを超えるランチを食べないわけではないが、例外的なできごとだったのだ。

 だが、外食物価も上がり、私の感覚も少しずつ麻痺してきて、最近ではその壁がなくなりつつある。行きつけだったトラットリアも、1000円ではランチが食べられなくなってしまった。
 今も時々行くには行くが、1300円では敷居がちょっと高い。

 そんな中、おいしいデザートのつくパスタランチを1000円で出す店を見つけ、今年からはそこによく行くようになった。
 ただし、前菜もコーヒーもなく、両方つけると1700円になってしまう。コーヒーだけなら1200円なのだが、それでも試したことはない。

 うーん・・・

 コーヒーが飲みたいのに200円を惜しんで無理に我慢しているわけではないのだが、そういう細かい出費を控えるような生活も、ちょっとどうかなという気もしてきた。
 塵も積もれば山となるとかいうが、どのみち、大した山にはならないのである。仮に山ができたとしても、そんなもの、ガソリンを一回入れるだけで吹き飛んでしまう。

 ここは一つ、年齢相応のお大尽になってやろうかなあとも考える。

 なったところで、前菜が食べられるとかコーヒーが飲めるとか、その程度のことなんだけれど。