★デパートと財布と靴

 先日、大阪ミナミの心斎橋から難波にかけて往復し、デパートで買い物をした。年に1度あるかないかの行事である。

 まず大丸。
 買う予定はまったくないのだが、通りすがりに「このジャケット、ちょっといい感じ」(「ほれた」とか「ほしい」ではない)と思って見ると、17万8千円の値札。論外である。9割引きなら買うかもしれない。

 ぶらぶらしていると、「なるほど、こんな格好をすればいいのか」という感じのマネキンがあった。コートが36万円、ジャケットが18万円、シャツが5万円、スラックスが8万円、手袋が7万円、靴が8万円・・・みたいな感じ。ざっと計算すると100万近かった。
 「このコーディネート、なかなかいいですね。これ、セットでください」といって100万出すところを想像してみたが、現実感がない。

 でも、ぜんぶまとめて100万ならそれほど高くないような気もしてくるところが不思議である。
 数万円以上は現実的な金銭として認識できないという欠点を持っているのは、ふだんから意識するようにはしているんだけれど。

 たまたま通りがかったブランドショップの前に飾ってあった時計がちょっと面白そうで興味をひかれたが、285万円とかだった。

 いつも思うのだが、いったいだれが買ってるんだろう?
 超高級ブランドショップ(ルイヴィトンやグッチではなく、ブルガリエルメス)で何か買っている人を見たことがない。あれほど客がいないのに一等地に立派な店を構えられるということは、ひとつひとつの製品で法外な利益をあげているということになるから、よけい買う気がしない(買えないけど)。
 まあ、ああいうのを買うような人は、外商とか営業とかから自宅で買うのかもしれない。

 ともかく・・・

 実際に買いたかったのは、財布と靴であった。
 前者は、まあいいのが2つほど見つかったのだが、いずれも2万5千円ぐらい。そんな高い財布、買ったことがない。
 後者は、以前たまたま寄った川西阪急でちょっと気に入ったが買わなかったリーガルウォーカー。その後、折りあるごとに探しているのだが、縁がなくて見つからなかった。

 心斎橋筋にいくつもある靴屋で聞いてみてもどこにもない。そうそう、○|○|が難波にできていてびっくりしたが、そこにもない。

 ところが、高島屋で聞いてみると、廃番になったためセールになっている中に、その靴があった。お目当てのキャメルはなかったけれど、ダークブラウンのほうにサイズがぴったりのものが残っていて、買うことにした。黒の方はサイズがなかった。
 リーガルの靴ってほとんどどこでも安売りしていないので、幸運というべきだろう。あとで調べると3割引きだった。初めてのリーガルである。

 財布の方は、とって返した大丸の無印良品で5千円のを買ってしまった。存在は知っていてちょっと気になっていたのだが、ネットでは販売しておらず、在庫がある店も阿倍野ぐらいだったのに、心斎橋の大丸にあったのだ。
 2万5千円のにもちょっと魅かれたけれど、5倍だと思うとやはり二の足を踏んでしまった。

 靴も財布も、ないないと思っていたものが見つかって手に入ったのだから、もっと喜んでもいいはずなのに、それほどの満足感はない。
 やっぱり、何万円とか出してもっといいものを買うべきだったのか、それとも、せっかくの小確幸を楽しめない損な性分なのか。