◆鼻から胃カメラ

 何だか胃の調子がおかしいように感じたので、胃の内視鏡検査を受けることにした。

 恩師・畏友・教え子!と、身近に胃がんを患った方々がいらっしゃるので、ちょっと気になっていたのだ。
 前回の検査は、3年前のバリウムX線である。

 一時期のことだったが、胃に塊があって動くのがわかる気さえした。これでもし本当に胃がんだったら末期なのは間違いないという感じだった。

 一方で、以前、古傷が痛んだ気がして胃カメラを飲んだときは、「異常なし」と言われただけで症状がなくなったので、今回もおそらく、何もないだろうとは思っていた。
 胃というのはほんとにメンタルな臓器なのだ。

 初めて胃カメラを飲んだのは、その「古傷」ができたときで、約20年前のことだ。その後退院するまでにさらに2回飲まされたと思う。
 それに、後年受けた上記の検査を加えると、都合4回ほど経験したことになるだろうか。
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 人によって違うらしいが、胃の内視鏡検査というのは、ちょっとした拷問である。大袈裟に言えば、「地獄というのはこういう状態がずっと続く場所のことをいうのではないだろうか」という気がするぐらいだ。
 麻酔をしようが何をしようが、うげぇおえぇぐわぁと、涙と洟と涎を垂れ流しながらうめき続けることになる(「意識下鎮静法」(軽い全身麻酔のようなものか)を使うと楽らしいが、経験はない)

 それを知っていたので、「上手な人がやると違うよ」というアドバイスを受け、はるばる名人と評判の医師を紹介されて訪ねても同じだった。

 それが、近年は鼻から胃カメラを入れる方法があって、家人も経験して非常に楽だというのでそれでお願いすることにした。

 名人だかどうか知らないが、一応専門医を標榜している方にやっていただくと、なるほど、口から飲むのとでは地獄と天国であった。
 鼻中隔がこすれる感じがしてちょっと痛いものの、それだけ。直後には鼻血すら出なかった(後から少しだけ出た)。その日ぐらいは鼻に違和感があったが、2日もすれば何もなくなった。

 カメラの性能が上がり、細い管で小さいカメラを使っても鮮明な画像が得られるようになったため、鼻から入れることが可能になったそうだ。
 やっている最中に話もでき、画面も見ることができる。鮮明な画像で、われながら綺麗なピンク色の胃だった。医師が見ているモニタはもっと精細に見えるという。

 途中、「この潰瘍っぽく見えるところ」と言われてちょっと焦ったが、ゴミのようなものがへばりついていただけで、水で流すとなくなった。ただ、その場所が少し赤くなっていた。
 結局、その場所について「1箇所だけ少し荒れてますが、これぐらいだったら以前のカメラではわからないぐらいです」と言われた。それならいらないと思うのだが、2週間分の胃薬をもらって帰った。
 
 前回みたいに、大丈夫と言われただけで症状が完全に解消・・・というわけではないが、ひとまずは安心である。

 あのころとは気苦労が違うんだろうなあ・・・ メンタルな臓器をもっと労らなければ。