◆今いる場所で・・・

 「豪雪で通行止めになった高速道路や一般道の復旧作業や情報収集にスノーモービルを使うことを、国土交通省と警察省が認めた」(朝日新聞)という。

 何を今さら。むしろ、今まで認められていなかったというのが信じられない。

 これまでは、「安否確認をするにも職員が歩いて現場へ向かっていたので作業が遅れがちだった」(同)のだそうだ。

 スノーモービルがスキー場などで一般的な乗り物になってからもう30年ぐらいは経つと思う。それなのに、今までそれが活用されず、昨年の大晦日から今年の正月にかけての国道9号線の豪雪でも「国道事務所職員が10キロ歩いて現場へ向かったので状況の把握が遅れた」(同)のだという。
 悲喜劇というか、ほとんど笑い話だ。

 吹雪の雪道を10キロ歩くのに4時間ぐらいはかかるだろうか・・・ スノーモービルなら30分とかかるまい。それに、機動性があるので、現場の状況や全体像を把握するにも好都合である。

 重要なのは、こういう運用変更をするのに特に難しいことはないという事実だ。空転続きの国会にかけて法改正する必要すらない。なにしろ、「通行止めの道路」をその設置者(管理者)が通行するだけなのだから。
 記事に意思決定過程の詳細はないが、要は警察庁が認めて国土交通省が通達を出せばそれで可能なのである。

 今回は、国土交通大臣大畠章宏氏)の発案だから、ことがスムーズに運んだらしい。
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 現場の人間には同じアイディアが二十数年前からあったのではないかと思う。そのぐらいのことは誰でも考えるはずだ。だが、法律や規則で許されていないという理由で諦めが先に立つ。実際、一生懸命がんばっても、労力がかかるばかりでなかなか現状は変更されない。

 ここに何度か書いた馬鹿な速度規制や駐車禁止規制なども、われわれがいくらおかしいと言ってもなかなか変わらなかった。
 それでも、近年はごくゆっくりとではあるが、まともな方向に変化してきている。私がかつて指摘した、「中央分離帯のある片側二車線の一般道で制限速度が40キロ」も「片側二車線の高速道路で制限速度が60キロ」も、その後、少しはまともになった。
 しかしながら、一般人のできることは限られている。何かできるとしても、労力に見合わない。

 現状を少しでも変えていけるのは、ある程度の権限を持った担当者だ。

 スノーモービルの活用にせよ制限速度の緩和にせよ、それをする権限を持った者や、少なくとも提案できる立場にある者は、どんどん愚かな現状を変えていくべきである。

 ことは交通行政に限らない。

 役所であれ会社であれ、今いる場所で、自分のできる範囲のことを・・・

 それをみんなが心がけることさえできれば、あっという間に世の中の理不尽の過半は解消できるとさえ思う。

 実際のところ、それができる人が5%未満、残りは消極的か邪魔をする・・・みたいな役所や社会だからだめなんだろうけれど。