★KAGEROU

 仕事の合間に本屋に立ち寄ると、例の KAGEROU がかなりの面積を割いて平積みされていた。

 元?俳優の水嶋ヒロが応募して、ポプラ社小説大賞を取った本だ。

 賞金は文学賞として空前絶後?の2000万円。ただし、これまでの5回のうち、実際に受賞したのは初回の方波見大志氏と今回の水嶋ヒロ(齋藤智裕)だけらしい。しかも、水嶋ヒロは賞金を辞退しているし、来年からは1/10の200万円になるという・・・

 受賞が明らかになる前、まだ作品を1つも発表していなかった水嶋ヒロが、俳優を辞めて小説家になると聞いたときには、なぜそんな無謀なことを思いついたのか、意味がわからなかった。
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 本の中身にはほとんど興味がなかったが、上記のような経緯があるので手に取ってみた。
 薄めの本で活字もゆったり組んであり、ほとんど会話だけで話が進んでいくので、立ち読みであっという間にあらかた読んでしまった(本屋さん、ごめんなさい)。

 読む気がしない・・・ということはなかったが、これがポプラ社小説大賞に応募してきた過去4年間の最高傑作だといわれると、素直に信じることはとてもできない。今年だけでも、応募作品は1285もあったというのだ。

 水嶋ヒロが何を考えているのかはわからないが、いずれにせよ、これでは完全なピエロになってしまうのではないかと危惧する。
 それとも、アイドルだったらこれでも大丈夫なのだろうか。

 初版は発売前から増刷を重ね、予約分だけで43万部に達していると新聞で読んだ。この出版不況にあって信じられないような数字だ。
 誤植部分?にシールが貼ってあったが、手作業で数十万回その作業が行われたのかと思うと、悲惨な滑稽さを感じてしまう。

 通常の書籍とは違い、書店の買いきりになるらしい。青息吐息の経営をしている本屋が、この本でとどめを刺されてしまわないかと心配になる。予約分ははけるとしても、それ以上に仕入れた分は不良在庫の山にならないだろうか・・・

 今後何がどうなるにせよ、今回の受賞と出版は、日本の文学?における一つの事件とはなるだろうと思う。