●パリの洗礼

Dsc01284_169 伊丹→成田→シャルル・ド・ゴールと飛んだ。眼下のシベリアはみごと。ウラル山脈にかかると雲海で何も見えない。
 いつもこんな感じだったと思う。

 空港からRERのB線でパリ市内へ。荒れた郊外の風景が続く。初めてパリに来るなら、このルートはダメだろうなあと思う。

 バリアフリーになっていない薄汚れた通路や階段を、重い荷物を引きずりながら苦労して進み、やっとの思いで地上に出ると、そこはセーヌ川のたもと、シテ島にたたずむノートルダム大聖堂が見える。

Dsc01361_32 これぞパリ・・・と早速写真を撮った瞬間、

 「財布がない!!」という大声が傍らから・・・

 晴れやかな気分が一瞬で暗転する。

 連れの女性が肩にかけていたバッグから財布をすられたらしい。いくら探してもない。しかも、キャッシュカードやらクレジットカードやら、事情があって現金十数万円までもが入っていたという。

 パリは初めてだという彼女への手痛い洗礼である。長い人生で初めての経験だそうだ。

 これが家族なら、互いの持ち物に目を光らせ、特に私が他のメンバーの面倒を見るのだが、今回の連れは、プライベートやら仕事やらで私より頻繁に海外に出ているお二人だったので、油断していた。

 飛行機の中で、30年ぶりにヨーロッパに行くというご婦人が「地下鉄などに乗っても大丈夫でしょうか」とおっしゃるので、「大丈夫だとは思いますが、スリなんかはいますので十分お気をつけ下さい」などと言っていたところだったのに・・・

 この件で、滞在中、4〜5箇所の警察に出向く羽目になった。ここはそもそも開いていない、ここは2時間待ち、ここでは扱っていない・・・
 まあ、いい社会見学にはなったが。
 ___

 とにかく地下鉄にばかり乗っている旅だった。ルーブルにもシャンゼリゼにも行っていない。ノートルダムだって一瞬見ただけだ。
 まあ、仕事だからそれでいいんだけれど。