★意地悪なカラス

 毎週金曜日、出勤時にゴミを出す。

 いつものようにゴミを持って家を出ると、ゴミ置き場の近くを一羽のカラスがうろついていた。

 特に追い払ったとかいうことはないのだが、私がゴミを持って近づくと、カラスは当然、飛び去った。その時点では、ほとんど気にもしていなかった。

 カラス除けの青いネットを持ち上げてゴミを置き、再びネットをかぶせてそのまま徒歩で勤務先へ向かう。

 数歩歩いたその時、バサッと音がすると同時に頭に何かが触れたかと思うと、目の前をまっすぐ前方にカラスが飛び去っていった。

 私の後方から音も立てずに滑空してきて、ちょうど頭を掠めるようにひと羽ばたきして高さを調整し、私の頭に接触していったのだ。

 ほんの一瞬、何が起こったかわからなかったが、すぐに、嫌がらせをされた、もしくは、からかわれた、ことがわかった。

 おそらくは、せっかくありつこうとしていたゴミを前に邪魔されたことに腹を立てていたのだろう。

 しかし、カラスが飛び去ってから私に嫌がらせをするまでには何十秒かの時間があった。3秒前のことすら忘れてしまううちの文鳥とは大違いである。

 カラスが賢いことはいろんな例で知ってはいるが、まさか自分が嫌がらせの対象になるとは思っていなかった。
 その意地の悪さが手に取るようにわかるのだが、それはすなわち、知能が高いということであるのはなんともやりきれない。