★イントゥ・ザ・ワイルド

 優秀な成績で大学を卒業し、ハーバードのロースクールにも行けるだろうという青年が、半ば将来を捨てて、おんぼろの日産チェリーで旅に出る。

 まもなく、車を失い、所持金は燃やし、本格的な放浪の旅を始める。
(後でアルバイトしてお金を稼いだりするぐらいなら、最初から燃やさなければいいのにとは思うんだけど)

 背後には両親の不和が横たわり、経済活動を優先する世間への反発がある。

 純粋と言えば純粋、若気の至りと言えば若気の至りである。

 最後は雪のアラスカで狩りをしたりしながら一人で暮らす。

 雪融けのころ、そこを出ようとするのだが・・・

 実話だというのがすごい。逆にいえば、実話でなかったらこれを映画として成立させるのは難しいような気もする。
 最後に出た、実際にアラスカの「不思議なバス」の前で撮った笑顔の写真がよかった。
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 旅は1990年ごろはじまる。主人公は、私より少しだけ若い世代である。
 そういう人物が、社会を捨てる旅に出て、行き先が国内(+メキシコ少し)だというのに驚いた。

 もし自分が同じような状況であれば、行き先はインドとかアフリカとか南米とかになったと思う。
 違う状況だったのでヨーロッパに行ったけれど。

 アメリカは、国内を放浪するだけで「世界」を擬似体験でき、世捨て人にもなれる広大な国なのだ。

 その広さと懐の深さは、行ってみなければわからない。

(Into the Wild, 2007 U.S.A.)