■高級なエサ

 先日、スーパーに行ったついでに文鳥のエサを買った。

 いつものエサではない安物を食べさせていたときにちょっと調子が悪くなったことがあったので、それ以降、必ず「高級」なエサを食べさせている。因果関係はもちろん不明だけれど。
 0.83リットルで840円。文鳥まで消費税を払っている。

 そのエサを持って支払いカウンターに近づいたが、どうも様子がおかしい。そこは別のケーキ屋さんのレジのようなのだ。レジの横にショーケースがあり、おいしそうなケーキ類がずらりと並んでいる。

 「カマンベールチーズケーキ」「キャラメルタルト」「チェリータルト」「モンブラン」「シュークリーム」「山羊ミルクプリン」・・・

 「ここでいいのかな?」と思いつつ、前の客がペット用品の支払いをしているようなので、半信半疑で待つ。その時点で、どうしてここでいろんなケーキを売っているのかわからなかった。
 しかも高い。

 レジの順番を待つうちに、鈍い頭が回って、これはペット用のケーキなのではないかと見当をつけた。
 しかし、まだ信じられない。
 ふつう見るよりも2周りほども小さい「ヨーグルトチーズケーキ」に、578円の値札がついている。山羊ミルクプリンは315円。どちらも、大きさを考えれば人間様が食べるものの2倍ほどの値段になるだろう。

 支払いを済ませてから、思いあまってレジの店員に聞くと、やはり「ワンちゃん用です」という。
 よく見ると、チョコレートを使ったように見えるケーキ類には、犬に有害な成分は使っていない旨の注意書きもある。犬にとってチョコは毒なのだ。

 しかしまあ、この不況で今日のご飯にも困る人が増えている国で、犬に人間より高いケーキを食べさせる人がいることに、大げさに言えば慄然とする。
 何にお金を使おうが稼いだ人の自由であるし、私だってもちろん偉そうなことは言えない。しかしそれでも、犬にケーキは・・・
 せめて人間用の半額以下ぐらいならこれほど気にはならないのだろうが、なにしろ倍である。

 今日は家人が仕事で遅くなるので、スーパーで寿司を買ってきた。「半額」のシールを貼ってあるやつばかりだ。どこかの家のお犬様は、和牛ステーキのあと、デザートに「倍額」のケーキを召し上がっているかもしれないというのに・・・

 わが家の文鳥のための「高級」なエサは、たぶん数か月はもつだろう。だが、あの犬用の小さなケーキは、おそらく数秒でなくなってしまう。
 せめて、犬がおいしく食べて束の間の幸せを味わうことを祈るしかない。