■違いのわからない女

 7月に車のタイヤを交換した。次にスタッドレスに換えるぐらいまでは十分大丈夫かとも思ったのだが、ちょうど車検でもあるし、8月に長距離を走る予定だし、9月からまた値上がりすると聞いたので、それやこれや総合的に考えて換えることにした。

 溝はまだ残っていたしゴムの硬化もそれほど進んでいなかったのだろう。同じブランドで同じランクの一世代新しいタイヤに換えても、ふつうに乗っているぐらいではそれほどの違いは感じられなかった。
 まあ、私が「違いのわからない男」なのかもしれない。
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 8月も終わりになって、「9月からタイヤ値上げ」の話を思い出し、以前から換えようかと思っていた家人の車のタイヤも換えることにした。そこそこ古いとは思うのだが、何しろ走行距離が少なく、溝がたっぷり残っているので、何となく換えそびれていたのだ。
 だが、近くで見ると、溝の底のゴムには細かいひび割れが入っている。おそらくは硬化も進んでいるだろう。そう思って、安全のために換えることにした。

 家人の車は、4WDの軽自動車である。名義は家人になっていて、実際、日常的に使っているが、買ったときの動機の半分ぐらいは、私が未舗装路を走りたいからであった。

 購入時は確か、オールテレイン・オールシーズンのタイヤがついていた。オンロードだけでなく、ダート・マッド・スノー性能もそれなりに配慮されたタイヤである。

 最初の交換時も、そのタイプにした。

 ところが、そのタイヤに換えてから、未舗装路を走った記憶がない。それにはさまざまな要因が関与しているのだが、本題?からは逸れるので割愛する。
 ともかくも、実際走るのはほぼ100%舗装路なのだから、それに見合ったタイヤを履くべきだろうと考えた。

 それで結局、舗装路での性能や静粛性を重視した4WD用タイヤにした。
 それなら何も、四駆用でなくてもいいようなものだが、ふつうのタイヤラインナップの中には合うサイズがないのである。軽の四駆なんて余計者のようなものだから、仕方ないのかもしれない。
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 やっと本題。

 タイヤを換えて店を後にした瞬間、まるで別の車に乗っているように感じた。

(今、鳴き声に誘われてベランダから外を見ると、エナガの群れがいた。早速写真を撮った)

 ゴムの硬化したオールテレインタイヤと、新品のコンフォートタイヤの差は歴然としている。まして、選んだのは、去年発売されたばかりの新製品だ。

 タイヤを換えるだけでこれほど変わるものなのかと感動し、帰宅して興奮気味に家人に語った。

 その翌日だったか・・・

 車で職場を往復した家人は、違いがぜんぜんわからないという。毎日のように乗っているのに、である。

 「何か違うかなあと思って、一生懸命違いを見つけようとしたけど」わからなかったそうだ。

 信じられない。これほど「違いのわからない女」が世の中にいるであろうか。家人の「違いのわからなさ」には昔からずっとあきれ続けているが、それにしても・・・である。

 コイツ、もしかしたら、新車に買い換えてもわからないのではないか、と思った。