◆傾いた家

 リビングのドアが調整ではどうしようもなくなってしまっていた原因はなんと

   !わが家が傾いている!

ためであった・・・

 修理行脚どころではなく、もはやよほどの覚悟がない限り修理不能であろう。

 もっとも、そうと決まったわけではなく、傾いているのは壁だけかもしれない。2階の一番大切な構造壁なので、あんまり慰めにはならないけれど。

 傾いた家というと、叔父の住んでいた社宅を思い出す。まだ小学校に入ったばかりのころだと思うのだが、あの異様な傾き具合は鮮明に覚えている。

 子ども心に、「傾いた家」というのは、こういうものなのか、と感心した。もはや開口部が平行四辺形に見えるほどで、頭の中に今も残るイメージでは、向かって右に10度ほど柱が傾いている。
 叔父はその平行四辺形の底辺の中点に、あぐらをかいて座っていた。浴衣姿で左手にはうちわを持っていた記憶がある。
 実際にも5度ぐらいは傾いていたのではないか。たとえ短期間でも、よくあんな家に住んでいられたものだ。

 わが家は幸いそれほどではない。ふつうに生活してたのではもちろんわからないし、計算してみると0.2度ぐらいというところのようだ。
 でも、こうして座っていても、右が下がっているような気がしてきた。気のせいだとは思うが。

 知りたいのは、最初から傾いていたのか、それとも10年の間に少しずつ傾いてきたのか、また、家がそれぐらい傾いているというのはふつうのことなのか、ということである。
 後者について何かご存じの方はぜひお教えください。

 結局、リビングのドアは、下を削って床に当たらないように加工してもらった。
 何度も削り直し、「相当削りましたよ」と力説されたことに若干落ち込む。

 だが、後で見てみると、上の方は以前より隙間が空いているので、もっと上手に調整すれば削る量が少なくてすんだのではないかという気がしないでもない。

 2回来てもらって5千円。出張費も税も込みなので、まあ安いと言わねばなるまい。