●非信頼関係

 そういえば、つい最近、昔の同級生から仕事を紹介してくれという電話が職場にかかってきた。

 そもそも、どうして直通の電話番号を知っているのかも謎だったが、残されたメッセージにも驚かされた。

 自分が私に認識されるかどうかも怪しんでいるにもかかわらず、折り返し携帯に電話をくれというのだ。

 同級生だったころにも数回話したかという程度で、卒業後一度電話で話して以来(それも先方からかかってきたものだった)、十数年間にわたって一切何の音沙汰もなかったのに、である。

 見知らぬセールスとかではないので礼を失するわけにもいかず、言われたとおり携帯に折り返し電話してしばらく話はしたが、私には到底真似のできない行為だ。
(念のため、彼女は現在ちゃんとした職に就いており、転職するつもりもない。いわば小遣い稼ぎのアルバイトをしたいという趣旨で、決して切羽詰まっていたわけではない。)
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 もう一つ、これは十年ぐらい前か、別の同級生から自宅に電話がかかってきたことがある。

 「久しぶり、懐かしいな、会おう会おう」というのだが、突然電話してきてそんなことを言われるような関係では全然なかった。

 いろんな話をして引き延ばし、とにかく会いたがるのだが、こちらは困惑するばかりである。

 結局のところ、保険の勧誘であることがわかり、あまりのことに脱力した。別に怒りはしなかったが、以来、ただの一度も何の接触もしてこない。
 ほんとに懐かしかったらまた連絡してきてくださいね(読んでるはずはないけれど)。

 親類や友人に保険に入ってくれと頼むのとはわけが違う。それに、騙そうとせずに最初から保険に入ってほしいと言われた方が数段マシである。
 思えばそれが、純粋に手段として知人関係を利用されそうになった初めての経験かもしれない。

 これに比べれば、最初に書いた方はまだ許容範囲である。

 いずれにせよ、こんな経験はほとんどない。信頼できる人たちに囲まれているありがたい人生だからか、それとも、交際範囲が極めて狭いからか・・・