◆『朝日』の立場

 ひとり親世帯への生活保護費に上乗せされている「母子加算」を廃止する方針を決めた政府を、『朝日新聞』(大阪本社版2007.2.17)が(たぶん)批判的に取り上げている。

 記事の見出しや全体の論調は、明らかに「母子加算は廃止するな」「低きにそろえるな」ということなのだが、取り上げている実例がそれと相反したものになっているように見えて仕方がない。

 首都圏に住む40代の女性。小学生の子ども2人との3人暮らし。生活保護による月収計27万円。

 家賃7万円、食費少ない月で5〜6万円、学校関係費2万円、光熱水費多い月で3万円、携帯電話代2万円・・・

 これを見て、ふつうに働いて生活している人が「支えなければ」と思うだろうか。

 もちろん、記事にはさまざまな「事情」も記してある。「すきま風が入る住まい」や「固定電話が引けず」は、その例だ。
 この女性が夫の暴力から逃れてきたことや病気がちであること、それに伴い借金の残る「マイナスからの出発」であることなども書かれてある。

 それでも、生活保護世帯の医療費は往復にかかる交通費も含めて無料だし(ただし、これも政府は今後の負担増を画策している)、手取り27万円なら・・・ と誰しも思ってしまうのではないだろうか。

 長男が友達と東京ディズニーランドに行くというので、「参加しないでいじめられたら・・・」と断れずに母子で出かけ、「周りに合わせて高価なおみやげも買ったから」計3万円出費した話も出てくる。

 このケースの最後は、女性の「これ以上、どこを削ればいいの」?で終わる。

 読んでいる多くの人が、「同情はするけど、削るとこだらけや」と、ツッコミを入れたくなるような記事になってしまっているのではないか。

・・・

 もしかして、「社の方針」や「デスクの意図」は「母子加算廃止反対」なのだが、記者としては「賛成」で、「働かずにこんなにもらって、こんな使い方をしている人がいますよ」と読者に訴えたいのではないかと勘ぐってしまうような記事だ。

 以前にも、立場は「弱者保護」なのに、中味を読むと「ぜいたく言うな」と批判したくなるカラクリを組み込んだような記事が目についた。

 いったい、『朝日』の立場や意図は那辺にあるのだろう。それとも、上で憶測したように、さまざまな立場や意図が綾なす妥協の産物として、こんな妙な記事が載るのだろうか。