●どうでもよくないこと

 なんでも、世の中はライブドアとフジテレビの争いで持ちきりらしい。頑迷固陋な旧世代を代表する夜郎自大なオッサンと、傍若無人な新世代を代表する荒唐無稽なオッサンとの醜い闘いに見えるせいか、あまり興味はない。「支配」しようが「破産」しようが「殺」そうが、そっちで勝手にやってくれ、という感じだ。巻き込まれている人たちには申し訳ないけれど。

 それにしても、自分がどちらの世代にも属していないことを再確認したような気がするのはおもしろい。「新人類」と呼ばれた世代ではあるが、何かと影の薄いわが世代を意識してしまう。有名なのは、宗教とか性がらみの変な犯罪者ぐらいで情けない。
 まあ、世代といっても人それぞれだが、すくなくとも私自身は明らかにフジサンケイ世代でも、ホリエモン世代でもない。旧秩序を墨守するのにも、それを無礼に破壊するのにも、感覚的になじめない。よくいえば?中庸、悪くいえばどっちつかずなのだろう。
 (フジサンケイの戦前懐古趣味は嫌いだけれど。)

 今回の騒動で、個人的に一つだけどうでもよくないことがあるとすれば、それは、東京電力講談社三菱電機など、ニッポン放送の大株主が、フジテレビのTOBに応じたことだ。

 このことがそれほど騒がれていないことには違和感を覚える。

 周知のごとく、今回フジのTOBに応じたということは、市場で株を売るのに比べて純粋に損をしたことを意味する。東電の損失は、億単位になっているはずだ。個人で応じた人がいるとすれば、単純にいえばフジテレビに差額を寄付したことになる。まあ、どこかの会社に寄付をするのは個人の勝手だ。

 だが、利潤を生むことを目的として成立している株式会社の取締役が、明白な損失を出す行為を意図的に行ったとすれば、商法上の特別背任罪になる。
 そうでないというならば、この億を超える損失が、実は会社の利益なのだということを明快に説明できなければならない(おそらく無理だ)。罰則は、10年以下の懲役または8千万円以下の罰金。軽い罪ではない。

 また、株主代表訴訟でも起こされれば、取締役たちは個人的にその損失分を会社に対して返還する義務を負うかもしれない。東電の株主にはうるさがたも多いから、おそらくこれは空想次元の話ではない。まあ、億単位の損失ぐらい、いざとなれば取締役がお金を出し合えば何とかなると思ったのかもしれない。なにせ、公表できないぐらいのとんでもない役員報酬を得ているのだから。

 だが、特別背任は犯罪だ。親告罪でもない。さて、検察は捜査を始めるだろうか。それとも、旧世代同士の身内?のかばい合いになるのだろうか。あの堤義明氏が逮捕される時代だ。予断を許さない。