■パイロット不足

 国内の職業パイロットの需給が逼迫してきて、いよいよパイロット不足が始まったという。あおりで、定年退職した機長の再雇用、自社養成枠の拡大(大型機の機長養成には1人あたり3億円かかるそうだ)、高卒への応募資格拡大、自家用免許所持者の採用などと、「パイロット確保作戦」に「官民で対応に躍起」(いずれも朝日の見出し)らしい。

 数年前、航空身体検査の視力制限が緩和された。お蔭で、私も楽にパスすることができるようになったのだが、あれも、現在や近い将来を見据えた「改革」だったようだ。

 自衛隊の航空学生(将来、戦闘機パイロットになる可能性も高い)の募集でさえ、なんと「遠距離裸眼視力が0.6以上」にまで緩和されている。みんな目が悪くなってしまって、目のいい応募者だけを選んでいたのでは、優秀なパイロット候補者を確保できなくなってきたということらしいが、パイロットの目の大切さが身に染みてわかるだけに、大丈夫かよ、と思わないでもない。

 日本航空などは、なんと、裸眼視力の制限を撤廃している!(もっとも、「+1.75〜−3.0ジオプトリー内のレンズを装用して測定した視力が1.2 以上」(日本採用の場合)などという制限はある)

 あああ・・・ 今ハタチで大学在学中なら、絶対パイロットを目指すだろうに・・・

 話が横道にそれてしまった。だからといって、職業パイロットへの道が容易になったわけではない。高卒まで応募枠を広げた航空会社の競争率は、126倍だったそうだ。まだまだ憧れの職業なのだなあ、と、なぜかほっとする。

 自家用パイロットまですべて含めても、日本には約1万人しかいない。そのうち、主要航空会社の現役職業パイロットだけで約5800人だという。残りの4200人の多くは、既に定年を迎えた職業パイロットや、私のようなサンデーパイロットだろう。これから職業パイロットを目指せる人は、何人いるのだろうか。自費で1500万とか2000万とかかけて職業パイロットに必要な免許を揃え、就職活動をしている人を何人か知っているが、見通しは明るくないようだ。

 だがまあ、何はともあれ、パイロット不足は空に憧れる者にとって願ってもない朗報である。私が追いかけられなかった夢を追いかけている方々の健闘を祈ってやまない。