■何を教えるべきか

 タイ北部を旅行していた知人からメールが来た。震源地から遠く離れた現地でも相当揺れたそうだ。「揺れを感じたら海から離れる」というごく単純な常識が人々にあれば、と無念に思う。そういうことをこそ、教育しておかなければならないのに。

 動物たちは、教育されていなくても察知したらしい。今回の津波で甚大な被害を受けたスリランカ南部のヤラ国立公園では、多数の動物がいるにもかかわらず、ウサギ1匹、死骸が確認されていないという。副園長は動物が津波を予測して逃げたと推測しているそうだ。(ロイター)
 その推測が正しいかどうかはわからない。だが、いずれにせよ、そういう能力がないわれわれは、知識として学んでおかねばならない。

 災害への対処方法だけではない。簡単な法律や契約の概念、経済・金融・保険などの基礎知識、病気やけがに関するあれこれ、掃除洗濯料理の仕方、子育ての方法・・・ 要するに、実生活を営む上でのプラクティカルな知識は不可欠だ。ほとんどの人にとっては微分積分よりも間違いなく重要だと思うのだが、これらはほとんど教えられることがない。

 「だれに何を教えるべきか」を抜本的に考え直すべきだとずっと以前から思っているのだが、私が何を思ってもどうにもならないのがもどかしい。