★スターバックスの華たち

 いわゆるシアトル系のコーヒーショップのうち、一番足が向くのはスターバックスだ。理由の一つはもちろん、全面禁煙であることだが、もう一つはおそらく、働いている人たちが生き生きしていることだろうと思う。

 他の店だと、よくてマニュアル的な愛想の良さが期待できるだけで、どうかするとアンニュイな表情のまま対応されたり、下手をすれば嫌々コーヒーを淹れているようにしか見えないことすらある。「どうして私がこんなとこでアンタにコーヒーなんて出さなきゃならないのよ」という声が聞こえてきても不思議ではないほどだ。

 スターバックスは違う。なぜなのだろう?

 「きちんと教育しているのだ」という人がいる。では他の店は教育していないのか。ハンバーガーショップやファミレスやコンビニは? 教育すれば店員の対応が劇的に変わるのか? 私は「教育」がそんなに簡単なものではないことを知っている。

 スターバックスの華たち(男はこの際どうでもいいです、すみません)が、マニュアルや教育を越えて生き生きしているように見えるのは、彼女たちがあの仕事に誇りを持ち、どうかするとほんとうに楽しんでさえいるからだと思う。意地悪く言えば、「スターバックスで働いているワタシ」が好きなのだ。そのことが、美醜を越えて(「醜」に入る人はそもそも採用されていないようだが)彼女たちを輝かせている理由だろう。

 アメリカ資本の「オシャレ」なコーヒーチェーンの店員として働くことにいわれのない?誇りを感じているとすれば、そのことに対して何か言いたくならないわけではない。だが、その誇りが私の足をそちらへ向けさせるとすれば、頭でっかちの批評は無力だ。
 いずれにせよ、仕事に対する自分の姿勢を振り返ってみれば、もはや、彼女たちが淹れてくれたコーヒーを黙ってありがたく味わうほかない。