◆向かいは何をする人ぞ

 先日、向かいのお宅の車のスモールライトがついたままになっているのに気づいたので、お知らせすることにした。

 とはいえ、もう着替えて(というより脱いで)しまっていたので、改めて服を着直して出るのも億劫になり、電話番号がわからないものかと、ネットで調べてみた。
 すると、フルネームと住所付きですぐにばっちり見つかったので、「向かいの車のライトがついたままになってるから、電話するわ」と家人に言うと、ご近所なのにそんなことで電話するのはヘンだと言われ、結局、家人が伝えに行った。

 翌日、私も、恐縮するくらい感謝された。
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 今の家に越してきてからもう20年近くになる。にもかかわらず、近所の方々のことなど、ほとんど何も知らない。

 両隣とは、もらい物のおすそ分けなどを人なみにはしているが、たとえば職業も知らないし、下の名前すらわからない。

 向かいのご夫婦とは頻繁に挨拶を交わすものの、それ以上の会話や交際はない。

 今回の件で驚いたのは、お向かいに関しては名字すら間違って認識していたことだ。
 表札の漢字を勝手に読んで、「○△□さんのとこに、またジョウビタキが来てるわ」などと夫婦で会話していたのだが、その読み方は間違っていて、実は○△◇▽さんだったのである。

 家人など、向かいのお葬式にまで出席しているのに、名字も把握していなかったことになる。もっとも、亡くなったのは奥さんのお母さんで、その名字はきちんとわかってはいたのだが。

 お向かいの電話番号も、初めて知った。両隣の電話番号はまだ知らない。

 そして、もう一つの驚きは、向かいのご主人が全国紙の編集委員や系列誌の編集長などをなさっていたことである。
 うちが越してきたのは、新聞社を退職され、大学教授なんかをなさっていたころらしい。

 今は悠々自適のようだが、特に気にもとめていなかった「向かいのご主人」が、そんな経歴の持ち主だとは考えもしなかった。

 隣のご主人は、いったい何をしている人なのだろう?
(奥さんの方は基本的に主婦だということがわかっている。)

 このネット時代、案外、調べてみれば簡単にわかるかもしれない。
 CIAのスパイだったりして。あ、だとすると、それはさすがにわからないか・・・