●「死ぬとこやってん」

 昨夜、母親から電話がかかってきて、出るなり、「私なあ、死ぬとこやってん」という。

 「電話かけられるくらいやったら大丈夫やん」と笑ったが、話を聞くとほんとに死にかけていたらしい。
 入院中の病院から電話しているという。

 高熱を出して人事不省になり、救急車で搬送。その間のことを何も覚えていないそうだ。一時はほんとに、「ハハキトク、スグカエレ」状態だったようである。
 その時点で電話してくれなければ(まあ、母親自身には不可能なわけだが)、死に目に会えなかったかもしれないではないか。

 実家近くに住んで看護師/助産師をしている義妹に電話して確認すると、敗血症で死にかけたという。先日も別の病気で入院していて退院したばかりだというのに。
 ネットで調べると、致死率25%。80近い年齢を考えれば、もっと高いだろう。電話の第一声を聞いたときには「大袈裟な」と思ったが、確かに「死ぬとこやっ」たかもしれない。血液中に細菌が入って増殖し、多臓器不全を起こして死に至るらしい。

 弟ですら死にかけるのだから、母親が死にかけても何の不思議もない。
 だが、「腰が」「膝が」とか言いながらよたよた歩くものの、それ以外はすこぶる元気そうなので、なかなか実感が持てない。

 「孝行をしたいときには親はなし」というが、実際は、「親がいなくなったから孝行したくなる」のではないかと思う。

 まだまだ孝行する気はないので、しぶとく生き残ってほしい。