◆けなげなソファー

 今でも十分愚かなのだが、昔はもっと愚かだったので、ソファーなんてものは一生ものだと思っていた。

 いやまあ、文字通りそう思っていたわけではないが、20年や30年は使えると考えていたのだ。実際、タンスなんかは文字通り一生使えそうである。

 しかしソファーは違う。冷静に考えればすぐわかるのだが、消耗品なのだ。

 家の新築後、生涯で初めて買ったソファーがくたびれ始めてからすでに数年。何年か前から買い換えなければと思っていた。

 今ブログを検索すると、すでに3年前には「ソファーもどうしようもなくなってい」る。その年の冬のボーナスで買おうかとその時は考えていたようだが、それから3年も経ってしまった。

 結局、13年近く使ったことになる。

 時々は意識して家具屋でソファーなんかを見ていたのだが、購入を決めたのは昨年の9月初旬だった。

 ほとんど決めかけていたのにその現物が展示から消えていて、実物をもう一度確認せずに買うのはリスクが大きいと思っているうち、まったく違うタイプのを買うことになった。

 驚いたのは、「今から注文を出して作るので5か月ぐらいかかる」と言われたことだ。まあ、もう何年も待ったんだし、そのぐらいいいかと鷹揚にかまえて待つことにした。

 そのソファーが今日届いた。座ってみると座面が適度に固く、これまでのがいかにへたっていたかがよくわかった。
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 古いソファーはもちろん引き取ってもらって捨てるしかないのだが、初めて買って毎日使っている愛着のあるソファーなので、捨てるのは何だか忍びなかった。

 それが・・・

 昨日、ソファーの肘掛けのところが破れているのを家人に教えられた。家人も一昨日に発見したという。

 新しいのが届く前日に破れているのを知るなんて・・・ まるで「こころおきなく捨ててください」とソファーが言ってくれているようだった。

 子どものころからのアニミズム的な性向が抜けない私としては、けなげなソファーにちょっとほろっと来てしまうのである。
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 ソファーは丸ごと、家具屋に引き取られていった。

 かなり立派で粋な形の木の足がついていたので、それだけ残してもらおうかと思ったが、言い出しかねているうちに運び去られ、後で残念に思った。

 過去へのつながりを求め、前に進むのが下手なのが私の欠点だ。たかがソファーの足を通して、捨て去ることの大切さをちょっと思った。