★妙な店

 たまたま、妙な店を見つけた。

 入り口を入ると、左手にはスピーカやラジオなんかが並んでいる。その奥には、カメラ。

 さらに奥には、キャンプ用品、特にアウトドア料理のための道具なんかがある。

 振り返ると、右後ろには万年筆、さらに、時計なんかが置いてある。

 さらに後ろには、洗濯板とか手洗い用石けん。

 店内を右に進んでいくと、服なんかが置いてある。数は少ないが靴も。そこを左に曲がると台所用品。

 そして、一番奥には本・・・

 それだけではない、椅子やらアクセサリーやらも売っていた。他に何が売っていたか、にわかには思い出せない。とにかくいろいろあった。

 いったい、ここは何屋さんなのか。あ、もちろんスーパーとかデパートとかの類ではなく、ひとつのお店である。
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 「セレクトショップ」という言葉を知らなければ、この店舗のあまりの異様さに驚いたことだろう。

 いや、驚いたのは驚いたのだが、「なるほど、こういうのをセレクトショップというのかもしれない」と思うと、自分の理解の枠にこの妙な店をあてはめることができて、居心地の悪さがいくらかは解消する。

 特にいいものというわけではないのだが、たとえば3千円ぐらいの木のお椀とか、1500円ぐらいのお箸とかそういうものが売っている。
 だが、客はもちろん?ほとんどいない。私が店にいた20分ぐらい?の間に入ってきたのは、3〜4人だったが、だれも何も買わなかった(と思う)。

 相当広い店内だ。店員だって3人はいた。とてもやっていけるとは思えない。家賃と人件費だけで毎月100万円以上かかるのは確実だろう。
 たぶん、毎日4〜5万円の粗利が出なければ営業を続けるのは無理だ。そのためには、十数万の売り上げが必要だろう。毎日・・・である。

 たとえば、3千円のお椀が50個売れなければならない。

 もしかすると土日には人が殺到して、1日で50万円ぐらい売り上げるのかもしれないが、素人目に見ると、半年持つかどうか心配になるような店である。
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 あともう少し、というところで、欲しくなるようなものがない。一年後にまだ営業していたら、何か見繕って買ってみようかと思う。