★プライバシーなき医院

 息子の耳の件で通っている医院が移転して広くなった。

 個人医院としてはこれまでだって特に狭くはなかったのだが、控えめに見ても5倍ぐらいの面積になったのではないかと思う。

 診療開始の午前9時前に行くと、待合室はガランとしていたのだが、それで実に7〜8人が待っていたのである。
 診察室も同様に広い。どちらも、一般的な学校の教室ぐらいはあるんじゃないかと思う。

 それとは別に、カルテ保管室だの聴力検査室だのももちろん完備している。駐車場も広い。

 診察の順番になる前に、次の患者として診察室へ入るのだが、設備の量は旧医院と変わらないように見え、広いスペースを持て余しているようにすら感じられる。

 それでいて・・・

 旧医院と同じように、目の前で他人の診療をなさっている。違うのは距離が遠くなったことぐらいだ。

 その気になれば、患者の名前や病状や生活までわかる。医師とのやりとりが丸聞こえなのだ。

 以前は、モニタに映った患者の耳や鼻の穴の中の映像まで見ることができた。今回はどうかわからないが、同様である可能性も高い。

 これだけのスペースがありながら、診察室のプライバシーを守るとか、そのために必要なら中待合を作るとか、一切お考えにならなかったらしい。

 医師としては信頼しているし、一般的に評判もいいからだろう、患者は引きも切らない。

 しかし、せっかくこれだけの広さを確保して真新しい医院を作ったのなら、もう少しプライバシーに配慮してもよかったのではないかと思う。

 おそらくは、そういうことをまったく思いつきもなさらなかったか、なにか深遠な理由があって従来の構造を踏襲なさったのかだろうと思うのだが、おそらくは前者だろう。

 よく学会等にも出かけていらっしゃるようだが、そこではもちろん、医院の間取り?などは話題にも上らないに違いない。
 だが、たとえば、医師と患者のコミュニケーションに焦点を当てた研究等も近年は出始めている。

 第一線の開業医が、2009年に作る医院の構造がこれでは、「病院設計学会」でも真面目に作って、きちんと研究・議論した方がいいのではないかと思う。