★くたびれた衣類

 なんだか、ベトナムへ行っている間に冬になったような気がする。色づいていた職場の木はいつの間にかほとんど落葉し、もはや冬木立の趣だ。
 つい先日まで色づいてさえいなかった記憶のある銀杏の木も、もう黄葉の盛りを過ぎている。風景がうらぶれてきた。

 だからというわけでもないが、所有している衣類がことごとくくたびれているのがさすがに気になってきた。ほとんど新しく買わず、どうしようもなくなるまで着続けるのでそうなるのだが、ここ数年ほど、いつにも増して何も買わないので、いよいよ、という感じである。

 幸か不幸か、この頃の衣類は安くても長持ちする。なかなか致命的なことにはならない。だが、だからといってそんなものをいつまでも着ていると、ますますみすぼらしくなってしまう。
 とはいえ、捨てるのは惜しい。もったいないではないか。

 それでもまだ、人から見える衣類はマシな方だ(と信じたい)。さらにひどいのは下着とかパジャマとかの類だ。
 ヨレヨレ、ダラン、デレン・・・なんと形容していいかわからない。意図しないのに今流行の?ずりさげズボンになったりしている。

 下着やパジャマはさすがにそんなことはないが、セーターなんかだと20年ものもザラだ。ズボンも10年ものがほとんど。
 靴下は親指のところにだけ穴が開くので、左右を逆にしてはいて誤魔化している。だが、それも限界に近づいてきたし、何かの際に穴の開いていない靴下を探すことももはや困難だ。

 なんだか、衣類のくたびれ方が人間のくたびれ方にまで及んでいるような気がしてきた。いっそ、気分一新、ぜんぶまとめてドイモイ(刷新)してしまおうかとも思うが、どうせ実行できない。

 衣料費がかからないのはいいんだけど、ちゃんとしたものを着ないと人間が余計にみすぼらしくなってしまうかもしれない。いや、もうとうの昔からそうなっているに違いない。