■トビの人生・・・

 トンビに油揚げをさらわれた、という言い方があるが、トビは何を食べて生きているんだろうか。

 一般的には、スカベンジャー(動物の死骸などを食べる掃除屋)だと言われている。漁港の近くなどで漁師が捨てた魚などに群がるのも見慣れた光景だ。

 タカの中ではもっともふつうに見られるのだが、その生態はどれほど知られているのだろう?

 そんなことを考えたのは、久しぶりに京都をポタリングしていて、鴨川名物?トビを観察する機会があったからだ。

 大阪北部に住んでいると、日常生活でトビを目にすることはまずない。だが、鴨川沿いを通るたびに、必ずと言っていいほど数羽は目撃する。

 これまでは、「トビがいるんだなあ」ぐらいにしか思っていなかった。そして、鴨川にいるんだから魚でも食べているのかと思っていた。

 ところが、観察の結果によると、なんと昆虫を食べているのだ。20羽以上いるトビのすべてが、それのみを、一心不乱に足で捕まえては飛びながら器用に口に持っていく。そして、食べカス(羽?)を落とすのだ。
 どうやら、食べているのは、カゲロウのように見える虫らしい。虫の方を先に見つけてそれを追いかけていくと、トビが見事にキャッチして食べている。

 家には10冊ほどの鳥の本があるが、トビの昆虫食に触れている本は1冊のみ。それも、ごく簡単に書いてあるだけだ。
 私自身、昆虫を食べるとは言っても、漠然とコガネムシのようなものを想像していた。あるいはセミとか。

 かなり大型のタカであるトビが、ホコリのようなか弱い虫を必死でつかまえてえんえんと食べ続けている姿は、なんだかもの悲しくも哀れであった。
 発見の喜びに浸っていた現場ではそうは思わなかったのだが、今思えば、生きることのばからしさと哀しさを何よりも雄弁に物語っているような気がするのだ。