★タイド・オブ・ウォー

 夜中にテレビ画面を眺めながら、何か変な夢でも見ているような気分に陥った。これ、ほんとに商業ベースに乗った映画なのだろうか。

 現代を舞台にした潜水艦ヒューマンアクション大作(のはず)なのだが、ストーリーも映像も、以前どこかで見たようなカットのつぎはぎなのだ。もしかして、オマージュとかパロディとかそういうのかも、とは思わない。そうではないこともまた明白だ。

 使われているCGは、どうかすると一昔前のテレビゲームにも劣る。潜水艦に魚雷が当たって真っ二つになったりするのだが、大学2年生ぐらいがプログラミング演習の授業で作ったような画像だ。
 出てくる俳優の演技は、一部を除き異様にヘタ。演出もひどい(たとえば軍医が心肺蘇生を行うシーン。ERでも見習えばいいのに)。

 伏線らしく見える意味ありげなシーンは、結局ストーリーと何の関係もない(わからなかったのではない、と思う)。複雑にしようとした話は全部雲散霧消して、あっけなくもあっさりとすべて円満に終了。「敵」の姿も意図もまったく描かれぬままだ。

 一方、異様にリアルなシーン、例えば空母を発着する戦闘機や緊急浮上する潜水艦の映像は、この映画のために撮ったのではなく、既に軍が持っている映像や過去に別の映画で使われた映像をそのまま使ったとおぼしい。

 それでも、自分をB級映画と思わず、あくまでもA級戦争大作であると主張しているように見える。そのせいでB級にも見えず、強いていえばC級(ってあるのかな)か。

 これ、ほんとうに映画なのかな。でも、映画じゃないとすると何なのだ。不思議なことに「みんなのシネマレビュー」にも題名が上がっていない。
 低予算で「戦争アクション大作」を作ろうとするとこうなってしまうのか。

 ・・・ところが、そんな変な気分になりながらも、それなりに見られるのだ。正直言って、かなりおもしろい。がくっと力も抜けるのだが、ちょっと引き込まれたりもする。おすすめです(笑)

 もしかして、同じ話を潤沢な予算で作れば、本当の大作になるのではないか。まあ、あのストーリー展開のままでは無理か・・・

(Phantom Below, 2005 U.S.A.)